2024年03月29日( 金 )

【『北方ジャーナル』記者・緊急寄稿】「この悲劇、教訓に」――男性遭難死の北海道・当別町

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

亡くなった古市さんは、自宅の前に
倒れていたという(北海道当別町)

 「切なく、悔しくてたまらない」と、北海道・当別町の主婦(71)は肩を落とす。

 17日夜、近くに住む無職・古市栄治さん(66)が自宅前で倒れ、低体温症で亡くなった。当日は猛吹雪で、文字通り一寸先も見えない「ホワイトアウト」状態。車で出かけていた古市さんは自宅から100mほどの所で雪山に突っ込み、警察に助けを求めて110番通報したが、同夜に自宅前で発見された時は心肺停止状態だったという。

 現地では前日夜から雪が降り続き、一夜明けてからは強風も加わった。猛吹雪でほとんどの人たちが外出を控えざるを得ず、翌18日になっても「1本先の電柱も見えないほど」(近隣の主婦)だったという。近くに住む男性(73)は「普通は外に出られない。古市さんは糖尿病だったから、病院かどこかに行こうとしたのかもしれない」と話す。

 先の主婦は「110番よりも、まず近所の私たちに助けを求めてくれていたら……」と唇を噛む。これまでにも何度か、車が埋まったという人たちに助けを求められ、夫が四駆車で救出に向かったことがあった。車には常に、スコップやロープ、防寒具、食糧、水などを積んでおくよう心がけている。地域の人たちとは携帯電話番号などの連絡先を交換し合い、頻繁に声をかけ合うよう努めているが、亡くなった古市さんはあまり積極的に近所づきあいをするタイプではなかったという。

 「普段の声かけや安否確認がいかに大切か、再確認した」と、先の主婦。「今回の不幸を教訓に、二度と犠牲が出ないよう、どこの家にも気軽に助けを求められる地域にしていきたい」。

 当別町は札幌都心からJRで40分ほどの距離にある町。米の産地として知られるほか、町内に北海道医療大学がある。

【小笠原 淳/北方ジャーナル】

関連記事