2024年04月20日( 土 )

日本庭園は日本人の心そのもの、絶やさぬよう伝え続けたい(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株) 別府梢風園

技術と伝統でつくられる日本庭園

 「日本庭園は日本人の心そのものだと思います。決してなくしてはならないものです」。福岡市東区青葉に本社を構える(株)別府梢風園の代表、別府壽信氏はこのように切り出した。同社は創業から半世紀以上にわたって、幅広い造園を手がけてきた。そのなかでも、とくに力を注いでいるのが日本庭園である。

 「庭には、眺めるための庭、動いて楽しむための庭など、さまざまな目的があります。その目的は時代や住まいとともに変わってきました。かつて広い庭を備えた住宅が当たり前だった時代もありましたが、今はその庭が車庫に代わり、狭いながらも機能的な庭を望む声が大きくなってきています。広い庭であっても、バーベキューができたり、ドッグランを設けたりするような、楽しむ庭が求められてきているように思います。時代の流れではありますが、このままでは日本の庭、日本庭園が廃れてしまうのではないかと危惧しています」(同)。

 枯山水や池など、かつての日本の庭は一般家庭から離れていってしまっているというのである。しかし、このままではいけない、と別府社長は語る。それは日本庭園の考え方が、すなわち日本人の心の在り方そのものだからだ、というのだ。

 日本庭園にはさまざまな様式があるものの、総じていえることは、自然を限られたスペースにもち込むこと。自然を美しいと感じ、自然とともにあろうとする感覚こそが日本人独特のものだという指摘だ。別府社長自身、日本庭園をつくるために滝や小川などの実際の自然な風景を観察し、美しさを研究している。自然の風景には石1つにしても無駄なものは一切ない。数千年、数万年かけて無駄をそぎ落とし、あるようにある様子こそが日本人の美意識の根源なのだというのだ。

 「日本の庭が住居から姿を消すのは時代の流れで仕方のないことかもしれません。モダンで機能的な庭も美しいものです。しかし、日本の庭が少なくなるほどに、それをつくることができる職人が少なくなってしまいます。石の配置にも原理原則がありますし、石にも顔があります。そういった見極めができる職人がいなくなることは日本の文化の1つがなくなることにつながってしまいます。」(同)。

 技術を失わせるわけにはいかない。日本庭園を手がけることができる職人集団であり続けるのには、こういった理由があるのだ。小さな庭であっても、日本庭園で培われた技術を応用して機能的な美しい庭づくりを心がける。それが社風となっている。

 「海外では日本の庭は高く評価されています。福岡は外国人客が多い観光地に成長しつつあり、その外国人に『これが日本だ』という場所を1カ所でも多く見せてあげられるようになるといいですね」(同)。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:別府 壽信
所在地:福岡市東区青葉1-6-53
設 立:1976年6月
資本金:8,500万円
TEL:092-691-0678
URL:http://www.shoufuen.co.jp

<プロフィール>
別府 壽信(べっぷ・ひさのぶ)

 1955年、福岡県生まれ。西日本短期大学造園学科卒業後、76年に(株)別府梢風園に入社。85年に同社代表取締役社長に就任した。(一社)福岡市造園建設業協会の会長も務める。趣味は読書、ゴルフ。

(後)

関連キーワード

関連記事