2024年04月24日( 水 )

【混迷、福岡県知事選】麻生氏の政治生命を左右する、保守分裂選挙の行方

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国会の恫喝男が推す、テレビコメンテーター

 4月7日投開票の福岡県知事選挙が異例の保守分裂選挙になることが、県政界に波紋を広げている。

 前回選挙で現・小川洋知事(69)を推した自民党が30日、元厚労省官僚の新人・武内和久氏(47)の推薦を決めたためで、独自に推薦願を出していた小川知事を蹴って、自民福岡県連の推薦を追認したかたちだ(武内氏については、既報)。

 小川氏は加齢にともなう体調不安説を噂されながらも、圧倒的知名度を背景に知事としての安定感が県民の支持を集めており、独断で党本部にねじこんだとみられる麻生氏への反発とともに、はしごを外された小川氏に対する県民の同情票が広がる可能性が出てきた。

 さらに、早くから武内氏支持を打ち出していた、福岡県選出の大家敏志参院議員(麻生派)といえば、昨年12月の参院本会議で議長に対するヤクザまがいの醜悪な恫喝芸が全国に広がったばかり。仏頂面がトレードマークの麻生氏と恫喝男・大家氏がゴリ押しして決めた候補者とあっては、テレビコメンテーターとして「知的爽やかさ」を売り出し中の武内氏も分が悪いと見る関係者も多い。推薦決定の段階の経緯から「もうすでに、ヒール(悪者)の貫禄よね」と苦笑いするベテラン地方議員もいるほどだ。

 県知事選と同日に県議選と福岡市議選が投開票されるため、自民地方議員らから表立って麻生氏らの暴走を批判する動きは出ていない。しかし、二階派の武田良太衆院議員はすでに「(推薦決定に)瑕疵がある」などとして小川氏支持を表明しており、県議を中心に水面下で同調する動きがある。

 県内に30万票の基礎票をもつとされる公明党は、夏の参院選をにらんで保守分裂からは距離を置きたい意向で、自主投票も視野にいれている(西日本新聞)という。県医師連盟や県町村会、さらに連合福岡などはすでに小川氏支持を表明しているが、推薦を出すとしていた立憲民主党が推薦状授与の期日を延期したのは、「野党色を出したくない」とする小川氏側の意向か。

必死にならざるを得ない、麻生氏の事情

 麻生氏らは今後、県内業界団体の切り崩しに全力を注ぐとともに、「オール福岡」色を全面に押し出して幅広く県民からの支持を訴えるとみられる小川氏に対しては、表立って対立を避けたい構えだ。しかし、自民党が行った最新の世論調査でも小川氏支持層は武内氏を圧倒しているため、麻生氏らが選挙戦終盤になりふり構わぬ泥仕合をしかける可能性は十分にある。

 というのも28日夜、安倍首相に直接「武内氏推薦」を要請したとされる麻生氏だが、その際に「推薦が取れないなら副総理を辞める」(西日本新聞)と迫ったとされており、事実上、県知事選の勝敗に自身の進退を賭けたことになるからだ。

 しかも、もとはといえば麻生氏の私怨がもとになったとみられる今回の保守分裂について、党本部がどれだけ本腰を入れてくるかは未知数だ。仮に武内氏が敗れることがあれば、さすがの安倍首相といえども麻生氏をかばいきれず、安倍政権に大きなダメージを与える可能性も出てきた。

 今年の知事選では福岡のほかに北海道、福井、島根、徳島の4道県で保守分裂が予想されているが、公認権を握る二階俊博幹事長は、自派議員を救済するために国政選挙なみの布陣を敷いた山梨県知事選ほど事態を重く見ていないという。

【視点】 麻生氏が小川氏排除にこだわる背景 : 麻生氏が小川氏排除にまわった背景には、鳩山邦夫元総務相の死去にともなう衆院福岡6区補欠選挙(2016年)が自民分裂となったことがあるとみられている。麻生氏は古賀誠氏らとともに県連会長を務める県議の長男、蔵内謙氏を推したが、その際に小川氏は中立を保ち、麻生氏らの応援演説要請を断ったとされる。蔵内氏は、鳩山邦夫氏の次男、二郎氏に8万5千票近い大差をつけられて敗北している。

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