2024年04月20日( 土 )

【鈴木宗男氏×佐藤優氏】北方領土問題、プーチンが言う「約束した」の本当の意味とは

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佐藤優氏「朝日新聞は、外務省の特定勢力に場所(紙面)を貸している」

鈴木宗男・新党大地代表(左)と佐藤氏

 「新党大地」(鈴木宗男代表)が毎月開催する勉強会「東京大地塾」が1月31日に衆院第二議員会館で開かれた。講師の佐藤優・元外務省主任分析官が北方領土交渉について解説し、その前後で鈴木氏が若干補足する進行で、質疑応答の時間も設けられた。

 冒頭は、佐藤氏の朝日新聞の記事批判から始まった。「国家主権を自ら放棄した、初の首相に……元次官のメール」と銘打った1月31日付の記事は、「『平和時の外交交渉において国家主権を自ら放棄した歴史上初めての首相になる』。外務次官経験者から熱いメールを受け取った。北方領土4島のうち、返還を求める対象を歯舞群島、色丹島の2島に事実上絞る方針に転じた安倍外交への懸念である」と指摘していた。

 これに対し佐藤氏は「次官経験者なら自分の名前を出して言うべき」「外務省内の特定勢力のために(新聞記事の)場所を貸しているとしか思えない」「2島返還の方針に転じたのは最近ではなく、昨年11月のシンガポールでの日露首脳会談」などと疑問視。そのうえで「朝日以外の新聞はみんな是々非々で、多様な意見を表明している。産経新聞も北海道新聞も論説と報道で割れていて、毎日は是々非々、日経は論説も記事も非常に正確」と、朝日の特異性を強調した。 

 続いて佐藤氏は、「1月22日、モスクワのクレムリンで安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領が会談をした。この対談は二面的性格がある。そのことは専門家ではないと読み解けない」として、1月23日の読売新聞の記事を読み上げた。

 「安倍首相とロシアのプーチン大統領は22日(日本時間22日夜)、モスクワのクレムリンで会談し、日露平和交渉の本格化を確認した。条約締結に向けた関係強化の一環として、今後数年で両国の貿易額を現在の1.5倍、少なくとも300億ドルに引き上げることで一致した。両首脳による会談は昨年11月から3カ月連続で、通算25回目。会談は約3時間行われた。両首脳は、2月にドイツで行われる国際会議に合わせて交渉責任者の両国外相による会談を行い、交渉を前進させるよう指示した。終了後の共同記者発表で首相は『相互に受け入れ可能な解決策を見出すための共同作業を私とプーチン氏のリーダーシップの下で力強く進めていく。その決意を確認した』と強調した(以下略)」。

KGB出身のプーチンは、常に「言葉を計算」している

佐藤優氏

 続いて佐藤氏は「1956年の日ソ共同宣言で、平和条約の締結後、歯舞と色丹を日本に引き渡すことになっている」と説明しながら、平和条約交渉が領土交渉解決と同じであると強調。そして、昨年のシンガポールとブエノスアイレスでの日露首脳会談では「交渉の加速化について合意した」という言葉を使ったのに対し、今回は「約束した」という以前よりも強い言葉を使っていることに佐藤氏は注目、次のように補足した。

 「プーチンはKGB出身だから、常に計算して言葉を選択します。『約束した』という言葉を用いたことは、歯舞群島と色丹島をロシアが日本に引き渡すことを明記した日ソ共同宣言に基づいた北方領土解決の意欲をプーチンは持っているということなのです」「両首脳とも日ソ共同宣言を基礎にした北方領土解決に向けて強い意欲を持っていることは間違いない。このことが重要なのです」。

 次に佐藤氏はロシア国内情勢について解説、日本のあるべき対応について次のように語った。

 「平和条約交渉はプーチン大統領を取りまく政治・経済・軍事エリートのバランスを反映しながら行われるのは当たり前なので、このことをよく踏まえて首相官邸と外務省が連携して、日本主導で進めることが重要です。特に気を付けないといけないのが時限性、時間のロスです」。

 そして過去2回、日本側内政の混乱で北方領土返還交渉が成功直前で頓挫したことを踏まえて佐藤氏は、二島返還の方向性を問う総選挙に打って出ることを提案した。最後に鈴木氏が「これだけは頭に入れて欲しいのです。元島民の一番の願いは、いつでも自由に島に行きたい。これが一番です。二番目は1島でも2島でもいい。返していただけるものは返していただきたい。三つ目はあの海を使わせてもらいたい。これが最大公約数ですから」と訴えた。

 鈴木氏は安倍首相と昨年13回も面談、今年1月にも会っているという。「今月もまた会おうと思っている。面談時間は1回、30分ぐらい。安倍総理からは並々ならぬ決意が伝わって来ます」(鈴木氏)。

 参院選の結果にも大きな影響を与えると見られている北方領土返還交渉から目が離せない。

【横田 一/ジャーナリスト】

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