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2019年02月07日 12:06

『脊振の自然に魅せられて』~体調不良の雪山あるき

 2011年2月にワンゲルの後輩2人を誘って雪山登山を計画した。この年は雪の多い年でもあった。

 前日、青春時代の友人から天神で一杯やろうと誘われた。腹の具合が悪く、とても飲める体調ではなかったが、断れずに天神に出かけた。お好み焼き屋でアルコールはビールしかない店だった。

 お茶を頼めばよかったものを、腹の調子が悪いにも関わらず、友人と同じ生ビールを頼んでしまった。胃のなかに少しずつ生ビールを流し込む。腹の調子が悪いと調子が出ず、会話もあまりできなかった。

 焼きあがったお好み焼きと生ビールをチビチビ胃のなかに流しこみ、途中でトイレへ向かう。帰路、天神の地下街をさまようように歩いてやっと見つけたトイレで用をたす。完全な下痢である。

 そんな状態で帰宅、山に行く準備をして就寝した。翌朝も腹の具合は治らない。朝食をほとんどとらずに集合場所に向かう。後輩たちへの挨拶にも力が入らない。

 車谷の登山口から矢筈峠へ向かう、次第に雪の量が増えてきた。腹に力が入らないので、登山靴が重く感じた。一歩進んで『ハー』、二歩進んで『ハー』と息を吐き、完全にストック頼みの山歩きになった。

 体調不良を後輩たちに悟られないようにして、雪面を踏みしめて歩くこと90分、やっと最後の梯子をよじ登り矢筈峠(900m)に着いた。見渡すと辺りは雪原だった。滑り止めの軽アイゼンを登山靴に装着する。

 天気は快晴、積雪20cm前後、ここからすばらしい残雪の縦走路歩きが始まった。

 雪原の縦走路に足を踏み入れ一歩、一歩、椎原峠へと歩いて行く。木の根元の雪は少し丸みを帯び、窪んで根開きしていた。新雪だとフワッとした感触だが、晴天下、残雪の雪原の表面は少し溶け、太陽を反射していた。 

 灌木地帯の縦走路に入ると、雪の重みで枝や倒木に行く手を遮られ、右往左往が続いた。先頭を歩く者がルートをつくるのだが、後に続く者は先行者の体に当たった枝が、弾かれて顔や手に当たることがある。3人はそれぞれ距離を置いて歩いた。時には幹ごと倒れ、道を塞いでいたため背を低くして歩くこともあった。しばらくしんどい時間が続いた。灌木地帯を通り抜けてやっと、自分たちが立てた道標ポイントへ着いた。

 道標はすっぽり雪に埋まり、静かに佇んでいた。道標越しに福岡の市街地・早良区や西区、そして博多湾が一望できた。視界が良いと小呂島や壱岐の島が見える時もある。

 しばらく歩くと熊笹の縦走路へ着いた。ここは雪の重みで広い雪原と化し、くつろげる場所となっていた。ここで小休止をし、それぞれ持参した非常食を口にすることにした。

 腹の具合はどうだろうと、おそるおそるお茶を口に含む。お茶はゆっくりと喉から胃のなかへ流れ落ちてゆく。弱った胃にお茶の温かみを感じた。少し回復したようだ。相変わらず食欲はないが、トイレに行くことも無かった。

 腰を下ろしているので雪の冷たさが尻に伝わってくる。後輩の1人は雪に転がり青空を眺めていた。雪山での贅沢な時間である。

 ここから20分歩き椎原峠に着いた。ここも雪原で静かな場所だった。我々の立てた道標もある。鬼が鼻へ、椎原登山口へ、脊振山へと3つのルート表示をした道標である。3年前、後輩の女子大生が応援にきて、立ててくれた思い出深い道標でもある。

 ここから20分の鬼ケ鼻岩まで登るつもりだったが予定を変更する。これ以上雪を歩くと時間がかかるし、疲れもあったので降りることにしたのだ。しばらく下ると雪も少なくなり、それぞれ軽アイゼンを外した。

 誰とも遭遇しない静かな残雪登山だった。激しい運動のおかげで、下り終えると腹の具合はすっかり回復していた。まさに絶不調の雪山登山だった。

残雪に立つ道標から福岡市市街展望(2011年2月22日) 
残雪の縦走路を歩く後輩たち

2019年2月7日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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