• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年02月08日 07:05

米中貿易戦争の行方 中国に依存するアメリカの軍需産業(2)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

アメリカを脅かす中国の大躍進

 そうした背景もあり、トランプ大統領は軍事力の強化に並々ならぬ意欲を見せている。大統領選挙の期間中にも次のような発言を繰り返した。「皆さまに約束したい。軍事力で勝てる国にすると。自分が大統領になれば、あまりにも勝ちすぎるので、皆さまは戦争に勝つことに飽きてしまうかもしれないが…」。当選後、早速、この公約を実行に移しているトランプ大統領である。国防予算を増額し、オバマ前大統領が約束したアフガニスタンからの米軍撤退を反故にした。それどころか、逆に増員を決定したほどである。

 にもかかわらず、国防総省の分析ではアメリカ軍の優位性は根底から揺らぎ始めているという。その原因はどこにあるのか。トランプ政権が見出した答えが「中国」なのである。軍事面に限らず、あらゆる分野で中国がアメリカを猛追している。このままでは、早晩、アメリカの世界的地位は中国に脅かされる。今ならまだ間に合う。何としても中国の影響力のこれ以上の拡大を阻止せねばならない。これがトランプ政権による「対中関税強化策」の狙いである。

 アメリカ農務省は15年4月の時点で、驚くべき報告をまとめていた。すなわち「アメリカ経済は今後15年間で50%の成長を遂げるだろう。しかし、この間、中国は300%の成長を実現する。30年までに中国はアメリカと肩を並べるか、追い抜くことは確実である」。

 中国の挑戦は農業分野にとどまらない。特許申請の分野でも中国の躍進はすさまじい。技術革新の分野での特許申請と獲得の状況を見れば、トランプ政権が目の敵にする「メイド・イン・チャイナ2025(中国製造2025)」の基盤となる中国の特許獲得戦略が一目瞭然である。

 08年の時点では、アメリカは日本についで世界第2の地位を維持していた。この年、日本は23万2,000件の特許申請を記録。中国は19万5,000件であった。ところが、その後、中国の猛追が始まり、14年には中国はついに世界一となった。その数は80万1,000件を突破し、全世界の特許申請数のほぼ半分を占めるに至っている。同年、アメリカの申請数は28万5,000件に過ぎなかった。

 問題は、中国がこうした特許を実際に新製品の開発に応用していることである。たとえば、スーパーコンピュータの世界を見てみよう。10年、中国のスパコン「天河1A」は世界最速の処理スピードを達成した。アメリカの国防総省の所有するスパコンを中国国防省のスパコンが凌駕したのである。16年の段階で、スパコンの所有数でも中国は167台で世界一となり、第2位のアメリカの165台を追い抜いた。ちなみに日本は29台という現状に甘んじている。その後も中国のスパコン開発は進み、「神威太湖之光」が世界最速の記録を塗り替えた。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年02月15日 16:00

【特別レポート】九電工関係者による傷害致死事件の真相を探る(4/完結編)~開成→東大卒弁護士による不自然な勾留理由開示請求

  昨年9月、長崎県五島列島の北端に浮かぶ小さな島で起きた傷害致死事件。加害者とされる男性が自首したにもかかわらずなぜかすぐに釈放され、いくつも不明な点が残され...

2019年02月16日 07:05

芝浦グループ多角化戦略のいま 繁栄の鍵は「人財」発掘にあり(後)

  芝浦グループホールディングス(株) 代表取締役社長 新地 洋和 氏 各事業の取り組み  ―19年の事業展望について。アグリ事業では多数雇用...

2019年02月16日 07:02

【日韓ビジネスコンサルタントの視点】米中貿易戦争長期化への懸念~戦々恐々の韓国経済(3)

  中国が取り得る3つの戦略  それでは、今回の米中貿易戦争の真の狙いはどこにあるだろうか。中国はこのペースで行くと、2020年の中盤ごろアメリカを抜いて...

2019年02月15日 18:11

元オネエ系タレントの振付師K・Bの弟も~中洲のクラブ経営者、脱税容疑で逮捕

   福岡地検特別刑事部は2月14日、所得税法違反(脱税)の疑いで、飲食店経営者椛島(かばしま)譲治(48)、竹田一郎(48)、井上貴博(41)、植村勲(39)、中...

2019年02月15日 17:56

わらび座「北前ザンブリコ」みどころ(1)

  ■劇団わらび座ミュージカル「北前ザンブリコ」 <開催日時> 2019年3月5日(火) 18:30~(開場18:00) &...

2019年02月15日 17:51

シノケン18年12月期は増収減益 市況悪化で今期は抑制予想

   15日、シノケングループが2018年12月期(連結)の決算発表を行った。同期の売上高は1,113億円(前期比5.1%増)、営業利益は118億円(8.3%減)、経...

2019年02月15日 16:06

石油から水へ:新たな富を生む『水力(ウォーター・パワー)』(前編)

   NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャ...

2019年02月15日 15:43

「はかた一番どり」のあらい、古賀市ふるさと返礼品で賞味期限切れ品を誤発送~昨年11月には宗像市の返礼品でも誤発送

   古賀市役所は14日、同市のふるさと納税返礼品を取り扱う株式会社あらいが、賞味期限切れの鶏がらスープを含む返礼品「水炊きセット和(なごみ)」5セットを発送してい...

2019年02月15日 15:25

芝浦グループ多角化戦略のいま 繁栄の鍵は「人財」発掘にあり(前)

  芝浦グループホールディングス(株) 代表取締役社長 新地 洋和 氏  北九州市の小さな電気店「シンチデンキ」からスタートし、太陽光発電マンションか...

2019年02月15日 15:09

越後薬草の塚田久志社長が死去

   越後薬草(株)(本社:新潟県上越市)代表取締役社長・塚田久志氏が2月13日に死去した。65歳だった。  同氏は1976年に新潟県糸魚川市筒石で同社を...

pagetop