2024年03月29日( 金 )

更年期を正しく理解し、健康増進の重要性を理解してもらうことが大切(2)

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NPO法人更年期と加齢のヘルスケア 理事長 小山 嵩夫 氏

 超高齢社会に突入した今、更年期からの健康づくり、未病対策は医療において、また、ヘルスケア産業においても重要な課題となっています。これからは“人生100年時代”と言われます。一般女性に、更年期のことを正しく知ってもらう啓発活動が重要になることはいうまでもありませんが、治療のほかにも日頃の生活のなかでできる予防、健康増進の重要性を自覚してもらい、実践してもらうことが必要不可欠となります。

 ―骨粗鬆症などは生活習慣病が原因と言われていますが、更年期の女性の場合その原因の1つがホルモンバランスの変調なのでしょうか。
 小山 最近は「私はまだ40代だから」と、更年期とは無縁だと思っている方がいますが、更年期対策は早いに越したことはありません。私は市民向けの講演会などで、「40代に入ったら更年期のことを意識してほしい」と呼び掛けています。今の時代は晩婚、晩産化で、30代後半で子どもを産むことが当たり前ですから、子育て中に更年期に入る人も珍しくはありません。授乳の長期化、卵巣機能の低下などにより、40歳前後で更年期を迎える場合もあります。

 とくに女性が注意しなければならないのが、生活習慣病のリスクです。「更年期イコール生活習慣病」と言っても過言ではありません。生活習慣病になっていく過程は、男性と女性とでは決定的な違いがあります。男性は、過度な飲食や喫煙、運動不足などがリスク要因となりますが、女性はそれ以上に女性ホルモンのエストロゲン低下が大きな要因で、急激に分泌量が減少すると糖の代謝機能が低下し、認知機能にも影響します。つまりエストロゲンの低下は更年期症状だけではなく、全身の疾病リスクに大きく関わっているのです。

 また、私は「助産師が更年期女性と関わらなければならない」と感じています。昔は助産師と更年期女性はあまり接点がありませんでした。しかし、高齢出産で、出産直後に更年期に入る女性が増えている現状を考えると、産後から更年期ケアにつなげることが重要といえます。たとえば、近年は出生数の5%が生殖補助医療で生まれていますが、これは出産年齢の高齢化で卵巣機能が低下していることに起因しています。年間の出生数を100万人としたら5万人が生殖補助医療での妊娠ですから、出産と更年期は隣り合わせといってもよいでしょう。これだけ高度生殖補助医療が発達し、高齢出産が多くなってくれば、性成熟期と更年期の境がなくなってくるのは必然といえます。出産年齢の高齢化が進み、生殖時期と更年期があいまいになっているからこそ、助産師は産褥期の更年期症状や更年期障害への対処法をしっかり学んでおく必要があるのです。

 もちろん一般の方への啓発活動も重要です。当会が認定するメノポーズカウンセラーへの調査(有効回答101名)では、HRTの普及率が低い理由として「更年期女性のヘルスリテラシーの問題」を指摘する回答が最も多いことがわかりました。確かにHRTについて新聞や雑誌で目にすることはあっても、その内容について理解している人は少ないのが現状です。その一方では、大多数の女性が、更年期に対する基本的な知識を備えていても、受診先や治療方法といった対処行動に結びつける知識が不足しているという面も否めません。それをサポートするのがメノポーズカウンセラーの役目ですが、的確なアドバイスができるようにするためには日頃からトレーニングをしておくことが大切です。そして、メノポーズカウンセラー自らが、「メノポーズカウンセラーである」ということをオープンにして、周囲にアピールしていくことが不可欠です。

(つづく)
【吉村 敏】

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