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2019年02月09日 07:05

米中貿易戦争の行方 中国に依存するアメリカの軍需産業(3)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

中国の軍事力を支える教育水準の高さ

 こうした中国の躍進を支えているのが教育水準の高さである。かつては世界に冠たるアメリカの教育であったが、近年では国際的な評価は下がる一方となっている。たとえば、12年にOECDが実施した世界の15歳人口50万人を対象にした学力テストの結果が、そのことを明らかにしている。

 それによると、数学と科学の分野では上海の子どもたちが平均点で断トツのトップである。アメリカのなかでは最も成績の良かったのがマサチューセッツ州の子どもたちであるが、それでも科学で20位、数学では27位という成績であった。実は、アメリカの子どもたちのランキングは年々低下しており、15年のテストでは科学で25位、数学では39位という有り様である。

 こうした子どもたちが成長し、30年にはアメリカの産業や研究の分野で中核を担うことになるのだが、これでは国際競争力で中国に歯が立つわけがない。科学者やエンジニアとして活躍できるアメリカ人の層が先細っているわけで、トランプ政権のお気に入りの「アメリカ・ファースト」は掛け声倒れになりかねないのが現実である。アメリカが世界に誇るシリコンバレーのIT企業にしても、「中国人やインド人のエンジニアに依存している」と言われて久しい。

 そのため、国防の分野での危機感は深刻な様相を呈している。アメリカの国防総省の分析によれば、「中国は軍隊の抜本的改革に着手している」とのこと。どういうことかといえば、「人民解放軍は全世界を標的にしたパワープロジェクション(戦力投射)を構築中」というのである。アメリカ本土を含む、世界のほとんどすべての地域にある核兵器を保有する基地に対して中国からミサイル攻撃ができる体制を着々と進めている。サイバー攻撃はもとより宇宙空間からの攻撃も可能にしようとの試みにほかならない。そうした先制攻撃を可能にする技術開発に従事する優秀な頭脳が国家を挙げて育てられているというから無視できない。

 実際、中国は20年までには地球の軌道を周回する35基の衛星によって地上のあらゆる目標を24時間、監視下に置く体制を完成させつつあるといわれる。アメリカが18年に入り、遅まきながら「宇宙軍の創設」に踏み切った理由も、こうした中国の動きを念頭に置いたものであることは論を待たないだろう。その結果、米中関係の未来はどうなるのだろうか。

 その点、アメリカの有力シンクタンク「ランド・コーポレーション」の最新研究『中国との戦争』が参考になるだろう。それによれば「25年までに、中国はより多くの、より改良された長距離弾道ミサイルと巡航ミサイルを保持するようになる。防空システムも進歩し、最新の戦闘機や音の静かな潜水艦、センサーの向上、情報処理能力やサイバー攻撃の飛躍的進歩によってアメリカにとっては強敵と言わざるを得ない。万が一、米中全面戦争になった場合、アメリカ軍は初戦で甚大な損害を被るだろう。アメリカ軍は当然、反撃に出るわけだが、勝利は保証されない。中国の強みはアメリカの弱みである。それはサイバー攻撃と宇宙からのレーザー照射にほかならない」。

 要は、もし米中が全面戦争に突入することになれば、「アメリカは中国に潰されかねない」というアメリカにとっては悪夢のような結論である。もちろん、ランドの狙いは「ゆえに、今こそ中国の脅威を取り除くべきだ。そのためにこそ、中国の経済的覇権主義を許してはならない」という危機感の喚起に力点が置かれている。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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