2024年04月20日( 土 )

アクロスで日露交渉についてのセミナー開催~政府の譲歩、説明に四苦八苦する外務省系シンクタンク

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講義に立った岡田美保研究員。
国際政治、国際安全保障学が専門。

 2月6日、アクロス福岡3階のこくさいひろばで「日露関係の現状と平和条約交渉の行方」と題したセミナーが開催された。福岡県国際交流センターが、県民の国際問題への理解を促進することを目的にシンクタンクである日本国際問題研究所と開催しており、今回で10回目の開催となる。

 講師は同研究所に所属する齋藤康平特別研究員と、岡田美保研究員。外務省出身の齋藤氏からは外務省の領土問題全般への取り組みと北方領土交渉の前史についての「レクチャー」があり、その後、岡田氏が日ソおよび日露間の交渉の経緯を解説、元島民の高齢化や日ロ関係の再考などの課題を整理した。

 セミナーの趣旨は以上の通りだが、同研究所はかつての外務省の外郭団体。現在も同省からの調査委託やOBが多く所属しているなど、日本政府の「公式見解」を補強する役割を担っている。政府のご意見番を努めるこのようなシンクタンクの研究者を、学術関係者は、「研究者としてはモグリ」と皮肉る。

 現在、日本政府は日ソ共同宣言を基にした平和条約交渉を行いつつ、経済交流も盛んに行っている。しかし、経済交流は元を正せば領土返還交渉を容易にするために始めたもの。本丸だった交渉は譲歩が続いてばかりだ。
ロシアはウクライナ騒乱や米ロシア疑惑で欧米諸国と軋轢を生んでいるため、エネルギー分野での金融など経済活動が一部制限されていてアジア市場での影響力を強めたい。ロシアの窮状に付け込むはずだった日本の外交は、逆に良いように利用されている。

 セミナーの最後に行われた岡田氏と参加者との質疑応答では、参加者から日本政府の外交に対する苛立ちが表れる場面もあった。
「そもそもソ連は信用ならない。関係を密にすべきなのか」という声が挙がったほか、「本当に4島返還が叶うのか」という質問に、「4島返還という100点に向けて外交努力をしているところ」と苦しい回答で応じる場面もみられた。

 内閣府は新聞などメディアを介した広告で、「2月7日は北方領土の日。もっと関心を」と広報するが、交渉過程の説明を避けている現状では、議論が起こるはずもない。

【小栁 耕】

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