2024年04月20日( 土 )

最近の上海事情

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 2019年2月。筆者は約3年ぶりに上海を訪れた。冬場はとくに大気汚染が深刻だったが、まだ完ぺきとは程遠いものの、それなりには改善されているという印象を受けた。というのも、中国政府は昨年までに、毎年160億元もの大金を投じ、大気汚染対策を行なってきたという。習近平政権は昨年、大気汚染防止行動計画、いわゆる大気「十条」の目標が達成されたと発表。PM2.5の濃度が大きく低下したという。訪れた期間が、旧正月が明けたばかりの週末とあって、工場の本格稼働が始まっていないのか、マスク姿の人たちはほとんど見られなかった。

 走る車も電気自動車がかなり増えてきている。オートバイはほとんどが電気スクーターで、音もなく近寄ってくるので危険である。従来のガソリン車のナンバープレートは白だが、電気自動車は黄緑色ナンバーをつけて区別されているのだ。中国では、車のナンバープレートを入手するのは困難を極めるという。車の増えすぎを抑制する中国政府の方針だが、都市ごとの入手方法は異なっており、北京では抽選制度、上海では競売制度が設けられている。
 上海では、ナンバープレートを入手するのに、高額な場合は9万元(約160万円)の高値がつけられたこともあるとのこと。市民の間では、車の車体よりもナンバープレートの方が高価だと皮肉られていると、現地ガイドが話してくれた。その高額なナンバープレートが黄緑色の場合、無料発行になるそうで、政府によるチカラ技での環境対策には驚くばかりである。

 上海市についてあらためておさらいすると、住民登録がある上海市の人口は約1500万人。そこに農村からの出稼ぎ者が1500万人、海外からの外国人駐在や無国籍人口などが約1000万人、昼間の人口は4000万人にものぼるという。

 地下鉄は毎年拡張していて740kmに達する。ロンドンや東京を抜いて、世界一の長さを誇る。高層ビルも世界一の棟数だという。上海在住の日本人は戦前に20万人ほどいたときがピーク。直近では、2012年に5万7400人が暮らしていたが、それ以降は減少傾向が続いており、現在は4万人台で推移しているという。日本企業の相次ぐ撤退の影響が大きいようだ。

 上海の人も日本同様、どこに行くにもスマホを手放さない。店では観光地以外では、現金の授受はあまり見られなくなり、ほとんどがスマホ決済。ニセ札が暗躍しているというお国事情もあるが、このあたりは日本よりもはるかに進んでいる印象だ。以前に比べて、日本でもなじみのチェーン店が増えた代わりに、現地ならではの店が少なくなってきた気がする。ご当地ならではの雰囲気は、上海のメインストリートからは見られなくなってきている。ただ、上海の目抜き通り「南京路」から道をひとつ外れただけで、大きく印象が変わる。きらびやかな百貨店のネオンとは対照的に、薄暗く街灯もない通りに、地元のスーパーや飲食店が軒を連ねている。格差社会は格段に広がっている印象を受けた。

 とてつもない勢いで発展し続ける世界最大の都市・上海。今回の旅はたった4日だったが、定期的に訪れて、街を俯瞰することで、世界の情勢が垣間見えてくる。

 

【杉本 尚丈】

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