2024年04月20日( 土 )

アジアのヴェネツィア、烏鎮

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 上海からは130kmほど離れていて、車で2時間半ほど。浙江省北部の嘉興市桐郷市にある観光地が、烏鎮(ウーチン)だ。江南6大水郷古鎮の1つとされ、アジアのヴェネツィアと呼ばれる風情あるまちだ。

 浙江省は中国23省のなかで面積は最も小さく約18万km2。省都は杭州。経済的に非常に豊かな土地で、アリババグループ創業者・馬雲(ジャック・マー)氏の出身地でもある。杭州は習近平国家主席とも関係が深く、毛沢東は杭州のことを「第二の故郷」と呼ぶなど、歴史的にも政治的にも重要な拠点の1つとなっている。南宋時代(1127年から1279年)の首都でもある。

 烏鎮は浙江省のなかでもとりわけ歴史が古く、「呉」の国と「越」の国が互いに大きな川を隔てて、しのぎを削りあっていた地域で、2500年の歴史があるという。その後、今から1500年ほど前、「隋」の時代に、全長1,794kmにおよぶ大運河の工事が行われたという(後に、この大運河建設は、万里の長城につぐ、歴史上ナンバー2の大工事と呼ばれるほどに)。この運河の恩恵で、南の物資を北に送る導線ができ、中国全土の経済の発展をもたらしたということだ。

 烏鎮は、上海・蘇州・杭州を結ぶ3つエリアのちょうど真ん中あたりに位置する。「明」の時代(1368年から1644年)とその次の「清」の時代(1912年まで)は杭州と蘇州が経済の中心だったこともあり、その貿易の拠点の1つとして、烏鎮も発展を遂げた。明・清時代の風情を残しつつ、さらに現代風に整備し、現在では、烏鎮のまちをあげて観光地化に努めている。アリババ創業者の地という縁もあり、2016年には世界インターネット大会が開催されたことから、歴史あるまちとは裏腹に、政府主導で、スマートシティ化が進められているという一面ももち合わせている不思議なまちだ。

 烏鎮のまちは東西2つに分かれる。2000年に整備され公開された東のエリア(東柵)は、東西に1.3kmにわたる住宅街である。入場料は120元(約2,050円)。観光地化されたエリアにもまちの人が生活していて、そのままの様子を見学することができる。東柵内には、特産品の店や歴史資料館などが立ち並び、白壁に黒い屋根という「明・清時代」のまちの雰囲気を楽しむことができる。

 そして、東柵の最西端から約3km離れた場所に、西側のエリア(西柵)がある。エリア内は東西に約1.8kmあり、入場料は150元(約2,550円)と東に比べて若干高めだ。エリア内には、17カ所のホテル・民宿があり、映画の上映やお芝居などのアトラクションも用意されている。まちの人たちの生活空間はないものの、120を超える土産物店、飲食店などが運河沿いにぎっしりと軒を連ねていて、一日中楽しめる観光スポットとなっている。

 歴史的に重要な拠点であり、ノスタルジックな雰囲気を醸し出す古い町並みがあり、さらにITの先端地でもある、さまざまな顔をもつ「烏鎮」。中国の歴史文化がぎっしりと凝縮された魅力あふれるスポットである。

 

【杉本 尚丈】

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