2024年04月20日( 土 )

節税保険販売中止でどうなる今後の節税対策

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 2019年2月14日に日本生命など生命保険の大手4社が、節税を目的とする保険商品の販売停止を決定しました。他社も追随する流れになりそうです。これまでは、保険料の全額あるいは半額、1/3、1/4を経費に算入することができました。その活用で法人税の圧縮を決算時に行う企業が多かったのです。今回の決定で、法人決算の税の繰り延べ、内部留保への対策として、生命保険の活用は難しくなります。3月決算を迎える中小企業にとっては頭の痛い話です。

 今後は、本来の保険の機能である代表者の保障(役員の保障、退職金)、負債対策としての保障に重点を置いた提案が中心となるでしょう。

 まず役員保障と退職金の原資づくりですが、保険商品としては終身保険で契約者を法人、被保険者を代表者、受取人を法人とした形態で、保険料を資産計上して資産を蓄積していく方法があります。

 そして、負債対策としては、負債額の約1.4倍の保障を掛け捨ての保険、商品としては定期保険で契約者を法人、被保険者を代表者、受取人を法人の形態で、代表者および役員の連帯保証人としてのリスク対策とする方法があります。以上が、今後の法人保険の提案の主流となると思います。
 別の角度から税金のお話をします。経営者の皆さまには、万が一のときは家族を守る、会社を守るという責任があり、2つの備えが必要です。今回は家族のために活用すべき3つの「非課税枠」についてお話しします。

(1) 生命保険金では、
  500万円×法定相続人数が非課税となります。
  (個人で生命保険に加入する)
(2) 死亡退職金では、
  500万円×法定相続人数が非課税となります。
  (会社で保険に加入する)
(3) 弔慰金では、
  業務内:最終給与月額×36カ月、
  業務外:最終給与月額×6カ月が非課税となります。
  (会社で生命保険に加入する)

 これら3つの非課税枠は「別枠」となり、会社と個人の両方で活用することが可能です。不慮の事態で解約することなく、長く継続して死亡退職金、弔慰金の原資を確保するために保険商品を適正に選択し、保険料の負担の少ない「無解約返戻金型」の定期保険などで対策を打つのが良いかと思います。

 生保会社の方針転換で、中小企業経営者向けの節税対策は大きく見直されることになります。保険営業マンにとっては腕の見せどころとなりますが、経営者もこれを機に、万が一の備えや税金について、自ら学ぶ姿勢が求められるようになるでしょう。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)

1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2018年1月より現職。(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長。

 

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