2024年04月26日( 金 )

弁護士が語る 知っておきたいトラブル予防 債権回収編

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相談の多い「債権回収」

岡本 成史 弁護士

 建設関係者からのご相談では、工事代金・設計料等の債権回収についての相談は常に一定数を占めています。

 債権回収の相談にも大きく2パターンあり、1つ目は相手方に支払原資がないケースです。この場合には、法的手続をとることの費用対効果を検討すること、相手方の財産の調査、存在する場合にはそれを他の債権者よりもいかに早く回収するかが、対応のポイントになってきます。

 2つ目には、相手方にも代金を支払わない何らかの主張があるケースです。工事に不具合がある、工事が未完成であるなどの理由から、工事代金を支払わないといった事案です。このパターンでも、とくに追加工事代金の請求をめぐって、「最初の契約に含まれている工事だ」「そんなのはサービスだろ、金が要るとは聞いていない」といって争われるケースが非常に多く見受けられます。

追加工事が発生したら

 追加工事代金を請求するためには、(1)原契約の内容を特定する(追加と主張する工事が原契約に含まれていないことを明らかにする)とともに、(2)実施した追加工事の内容を特定し、(3)追加工事代金額について合意したことを証明する必要があります。

 しかしながら、現実には原契約時に、見積書や契約書添付の明細書において工事費用が「一式」計上されていたり、工事の着工を急ぐ結果、打ち合わせ途中の工事内容が一部確定していない段階で契約しているなどの事情から、原契約の内容を特定できず、「追加と主張する工事」が原契約に含まれていなかったと証明できないという事案も散見されます。また、工事途中でたびたび追加変更が発生し、追加工事契約書はおろか見積書さえ提出されておらず、追加工事代金の証明やその合意の証明が困難な事例も多く見受けられます。

「一式」は極力使わない

 追加工事代金をしっかり請求するためには、(1)原契約時の工事明細等では「一式」計上せず、できる限り工事内容を詳細に特定すること。(2)追加変更の要請があった際には、最低限見積書を提出し、できる限り変更工事契約を締結する―という対応が重要になってきます。打ち合わせ議事録を作成し、参加者に署名してもらうという方法で証拠を残すのも有益な方法です。

 たとえば、マンション建設時に予期せぬ杭が発見され、1,000万円強の既存杭撤去工事が発生した案件でも、契約書に「地中障害物除去工事は別途」と明記しており、杭発見後すぐに撤去費用の見積書を提出するなどの対応をしていたことから、支払いを拒む施主から無事に杭撤去費用を回収することができたケースもあります。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会委員、一般社団法人相続診断協会パートナー事務所。
URL:http://okamoto-law.com/

 

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