2024年03月29日( 金 )

義務化される「有給休暇」

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 最近、報道でも「働き方改革」という言葉をよく聞かれるかと思います。安倍政権が力を入れている政策の1つであり、2018年6月には働き方関連法案が成立し、早いものでは19年4月から施行されます。今回は、19年4月から適用される「有給休暇消化の義務化」について解説いたします。

 19年4月から、年10日以上有給休暇の権利がある労働者について、最低でも5日以上は有給休暇を現実に与えることが義務付けられました。具体的には、有給休暇の消化日数が5日未満の対象従業員に対しては、企業側が有給休暇の日を指定して有給休暇を取得させる必要があるということになります。

 年10日以上有給休暇の権利がある労働者というのは、具体的には次のいずれかに該当する労働者です(なお、直近1年間の出勤率が8割以上であることも必要です)。(1)一般労働者(正社員、フルタイムの契約社員、週30時間以上勤務のパート社員など)で、入社後6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した従業員、(2)所定労働日数が週4日または年169~216日のパートタイム労働者で、入社後3年半以上経過しているもの、(3)所定労働日数が週3日または年121~168日のパートタイム労働者で、入社後5年半以上経過しているもの。この段階で、「えっ、パートさんにも有給休暇があるの?!」と思われた方は要注意です。働き方改革関連法案とは関係なく、従前からパートタイム労働者でも、一定の要件を満たせば有給休暇の権利は発生しています。週2日以下勤務のパートタイム労働者については、今回の有給休暇消化の義務化の対象とはなっていませんが、入社6カ月間勤続勤務(8割以上出勤)したパートタイム労働者には、週2日勤務で3日、週1日勤務で1日の有給休暇が付与されますので、ご確認ください。

 企業に課される具体的な義務は、基準日から1年間に有給休暇消化日数が5日未満の対象労働者に対し、企業から時期を指定して、有給休暇を取得させるというものです。従いまして、5日以上の有給休暇を取得している労働者に対しては、企業側で時期を指定する義務はありませんし、計画年休制度を導入してすでに5日以上の有給休暇を取得させている場合も、別途時期を指定する必要はありません。

 しかしながら、19年4月1日以降、義務に違反して、対象となる従業員に有給休暇の指定をしなかった場合には、企業には30万円以下の罰金が課されることになります。また、労働関係法令の違反があった企業には、助成金が支給されないという不利益もあります。本制度には中小企業のための適用猶予はなく、すべての企業に一律に適用されることになります。

 今後、法に違反しないためには、各労働者の有給休暇取得状況をしっかりと管理していくだけではなく、この機会に社内制度の見直しをしなければならない企業もあるかと思います。また、働き方関連法案では、有給休暇消化義務化以外にも残業時間規制の厳格化など多くの重要な改正点がありますので、ぜひ労働法制に詳しい弁護士に御相談ください。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士

1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士/岡本綜合法律事務所代表。

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