2024年04月19日( 金 )

突如出現した大穴、前代未聞の博多駅前陥没事故(後)

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工事再開は未定――

 JV筆頭会社である大成建設(株)の元請責任は重大だ。施工者に過失があった場合、工事における賠償責任に加え、事故現場周辺の店舗や企業への営業補償などを考えれば、どのような数字がはじき出されるかは想像もつかない。通常、JVのような企業体に過失があった場合は、受注比率によって賠償額も決定されるというが、原因究明に至っていない時点では未定。もちろん、着工の際に保険に加入していることから、賠償額がすべて施工者の持ち出しとなるわけではないが、相応の損失が発生することは確実となる。大成建設広報室はこの件について、「補償については、個別訪問を開始しておりますが、詳細については回答を差し控えさせていただきます」と回答している。

 一方、発注者である福岡市の責任も問われなければなるまい。とくに、陥没後のスピーディな復旧作業が国内外で賞賛されたが、埋め戻しにあたって地下に放置した信号機や配管などの“産業廃棄物”を、福岡市が掘り返して処分する方向で検討しているからだ。この件は福岡のニュースサイト「HUNTER」で先んじて報じられたが、データ・マックスでも本件について福岡市交通局に取材を行い、回答を得た。
 それによると、市交通局は賞賛を受けた陥没箇所の埋め戻し作業を、ライフライン・交通機能回復優先の「仮復旧」だとしている。陥没箇所が塞がったから本復旧というわけではないのだ。また、「掘り返し作業の可能性等も踏まえ、流動化処理土による埋戻しを行ったものです」とも回答。高島市長は本復旧が完了していないと知りつつ、「地盤の強度が30倍になった」と胸を張ったということだ。高らかに謳われた“復旧完了”宣言には疑問を持たざるを得ない。

 また現状、福岡市営地下鉄の延伸工事についても再開は未定。市交通局では、当初予定の2020年度での延伸予定を撤回はしていないものの、今後、追加の安全対策などが必要になれば、工期や費用がかさんでくる可能性もある。

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 事故発生からちょうど3カ月が経過しようかという2月7日、改めて現場を訪れてみたが、あたり一帯は車や歩行者が何不自由なく通行しており、周辺の店舗等も至って平静。事故発生時の写真と見比べてみても、ここに大穴が開いていたとはにわかに信じがたい。延伸工事は原因が解明した後に再開されるとしているが、うやむやのまま、なし崩し的に工事が再開されることだけは避けなければならない。まずは掘り返しと埋め戻しを含めた完全復旧と、陥没事故で被害を被った方々への賠償などを速やかに終え、本当の意味での事態の収束を望みたい。

(了)
【坂田 憲治】

 
(中)

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