2024年03月29日( 金 )

国道202号バイパス全線開通 広がる生活圏、近まる糸島と福岡

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自動車専用道路「国道497号」と一般道路「国道202号バイパス」で構成され、福岡市西区から糸島市二丈福井間の23.3kmを結ぶ「今宿道路」。2019年1月27日に未開通だった国道202号バイパス・有田中央交差点~真方交差点間が開通したことで、全線開通を迎えた。これにより、糸島市と福岡市はさらに身近な存在になった。


今宿道路のこれまでとこれから

 今宿道路は、国道497号と国道202号バイパスで構成される全長23.3kmの区間。福岡市と糸島市を結ぶ基幹道路であるほか、福岡市を起点に佐賀県・唐津市、伊万里市、長崎県・松浦市、佐世保市を経由して佐賀県・武雄市に至る全長約150kmの高規格幹線道路「西九州自動車道」の一端も担っている。今宿道路の全線開通により、糸島市と福岡市間における交流人口の増加への寄与などが期待されている。

 国道202号バイパスは、1970年に事業着手。事業区間は、福岡市西区拾六町~糸島郡二丈町大字福井(現・糸島市二丈福井)だった。その後、福岡市西区の十郎川交差点から順次、糸島市方面へと工事・供用開始が進み、2019年1月27日の有田中央交差点~真方交差点間の開通により、全線供用開始となった。

 今宿道路を構成するもう1つの自動車専用道路「国道497号」は、88年に「西九州自動車・今宿道路」として事業着手した。事業区間は国道202号バイパスと同様で、渋滞緩和や台風などの自然災害発生時の「迂回路確保」を目的として着工。事業は「福岡前原道路I期(西区周船寺~前原IC)」工事の事業許可が下りたことで本格的なスタートを切った。同Ⅱ工事では「福岡市西料金所~周船寺IC」が、同Ⅲ期工事では「周船寺IC~前原東」などが整備され、2011年に福重JCTで福岡高速5号線との接続を完了。糸島市方面から福岡市都心部への交通アクセスが格段に向上したほか、福岡都市高速道路を介して九州自動車道太宰府ICともつながったことで、熊本・鹿児島県方面への移動時間・距離も大幅に短縮された。

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 これまで課題とされていた福岡市方面から糸島市への交通アクセスの向上も、今回の今宿道路全線開通により改善される。国道202号バイパスの有田中央交差点~真方交差点間が未開通だったころは、この区間で一度国道202号バイパスから下り、急カーブやアップダウンの激しい側道を走らねばならなかった。しかし、今回の全線開通により、その手間がなくなった。

 もともと福岡市~糸島市間の移動時間は40分程度と、決して負担を感じさせるようなものではなかったが、交通利便性がさらに高まったかたちだ。今後は、観光を目的とした両都市間における交流のさらなる活発化に加え、生活圏として糸島市が選択肢に含まれることで、同市への移住・定住者が増える可能性が高まる。

安全性も向上

 今宿道路の全線開通は、利用者の安全にも寄与するものとなる。前述の通り、全線開通前は、急カーブや急勾配が連続する道路を走る必要があった。そのため、国道202号バイパスの迂回路として「県道前原富士線」を車両が走行しやすいように改修したが、道路の一部は近隣の「糸島市立 南風小学校」の通学路にもなっており、安全性を危惧する声も上がっていた。

 県道前原富士線を改修した理由の1つに、13年4月からの国道202号バイパス「二丈浜玉道路(糸島市~唐津市)」の無料化が挙げられる。これにより国道202号バイパスの交通量は、無料化前の1万3,800台(12時間の測定)から、7,000台増となる2万800台(同)となった。しかも、有田中央交差点~真方交差点間が未開通だったため、車両は側道へ一度下りる必要がある。渋滞は必至であり、この緩和のためにも県道前原富士線の改修は必要不可欠だったのだ。

 しかし、県道前原富士線は通行車両への配慮がなされたものの、歩道の整備が不十分で、歩行者や自転車利用者に対する安全対策が課題となっていた。二丈浜玉道路の無料化前の県道前原富士線・真方~南風台間の交通事故件数は平均3.7件/年だったのに対して、無料化後の交通事故件数は平均7.3件/年とほぼ倍増となった。

 今宿道路・有田中央交差点~真方交差点間は道路の高低差が解消されたことに加え、歩道や自転車専用道路も整備された。交通アクセスの向上だけではなく、利用者の安全面にも最大限の配慮がなされた格好だ。

開通式で語られたそれぞれの思い

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 19年1月27日、今宿道路・有田中央交差点~真方交差点間の開通と、それにともなう国道202号バイパス全線開通を祝して開通式が開催された。当日は快晴の下、約80名の関係者や、多数の地元住人たちが式に足を運んだ。

 開通式は、式の主催であり、今宿道路開通、国道202号バイパス全線開通の早期実現に率先して取り組んだ期成会(きせいかい)の柚木利通会長の挨拶から始まった。

 「本日、今宿道路・有田中央交差点~真方交差点間が無事開通の運びとなりました。この間、雷山校区・南風校区・加布里校区の皆さまには、用地の相談、工事のご協力をいただき、誠にありがとうございました。また、本日ご列席の皆さまから賜りました、多大な理解とご協力に対し、改めて感謝申し上げます」(柚木会長)。

参議院議員 松山 政司 氏

 続く、衆議院議員・古賀篤氏は「多くの方の思いが1つになって今日という日を迎えられました。心から関係者の方々のご協力に感謝いたします。今宿道路は生活・物流道路として、また、非常時の避難道としても、今後、地域の発展に寄与すると確信しています」と、今宿道路開通への思いを話した。

 また、参議院議員・松山政司氏は「今宿道路は、昭和45年に事業着手し、今日まで実に半世紀に渡り整備が進められてきました。これまで事業を推進されてきた諸先輩方、地元の皆さまを始めとする関係者の方々には、本当に感謝しております。平成最後のこの年に、工事を無事完了できたことは感無量です。今回の開通により、地方創生のモデルにもなっている糸島市のさらなる発展、そして福岡都市圏ならびに北部九州のさらなる発展にも期待しております。その実現のためにも、残された整備区間の整備に早急に取り組んでまいります」と、今宿道路の開通を機に、九州全体の活力向上への役割をはたす西九州自動車道全線開通の早期実現をさらに推進していくと力強く話した。

 小川洋福岡県知事は「国道202号バイパスの全線開通で、福岡市から糸島市へのアクセスは格段に向上します。福岡から糸島市への観光客や移住者の増加に大いに期待したい」と、開通後のまちの発展に期待を寄せた。

 そして月形祐二・糸島市長は、「多くの方々のご協力のもと、アップダウンの激しいこの道を道路として整備することができた。誰か1人の力ではなく、総合力で今日という日を迎えられました。今宿道路の開通によって、糸島市への観光客の増加、そして、地元の皆さまの生活利便性の向上をはたしていきたい」と、糸島市のさらなる活性化への思いを語った。

 今宿道路の開通により、福岡市~糸島市間の通勤、運送、観光など、多方面での移動負担が軽減される。国道202号バイパス全線開通は、両市民の生活スタイルに新たな選択肢をもたらすものになると期待されている。

【代 源太朗】

福岡県知事 小川 洋 氏
糸島市長 月形 祐二 氏

 

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