2024年04月20日( 土 )

大牟田再開発 芝浦G撤退の真相(3)未定の公共部分

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大牟田市の新栄町駅前地区市街地再開発事業において、建設代行者に選ばれていた芝浦グループが事業からの撤退を表明。期限までに同意書が提出されなかったことで、同事業準備組合が基本協定を解除した。着工目前での芝浦撤退に再開発に期待を寄せる地元は「なぜ?」の声。事業が立ち遅れるため、その責任は芝浦グループに向けられている。一部報道では、「ホテルの採算が合わない」と撤退理由を挙げているが、「それはほんの一部」と芝浦グループ関係者。この2年間事業と向き合ってきた芝浦グループが撤退せざるを得ない理由はほかにあった。

撤退理由その3「未決定の公共部分」

 計画図には、建物ではないが、駅前広場とバスや車の乗降用のロータリーが入っている。この部分は市の持ち物で、基本的には市が施工を進めていくのだが、まだ内容は決まっていない。大牟田市に確認したところ、「本組合ができてから検討に入る予定だった。内容も決まっていないため、設計も施工も発注できない」とコメント。建物の建設代行者は2016年度中に決定していた。

開発が予定されているアーケード街

 芝浦グループ関係者は「市は公共部分の施工については、入札でも随意契約でもいいと言っていたが、とにかく早く決めて欲しかった」と話す。公共部分の施行者が決まらないと困るのは、施工の工程や車両、重機、産廃の配置などを打ち合わせできないこと。この区画に3つの建設会社が同時期に稼働することになる。安全経路は時期によって変える、資材置き場を共同で使うなど、芝浦グループ・西鉄グループで話し合い、段取りを決めていた。

着工後に、仮に公共部分の施行者が決定しても、事前協議ができておらず、自由に出入りされても現場が混乱するだけ。そのためにも、隣接現場3社での綿密な打ち合わせが必要だった。しかし、着工直前でもそれは実現しなかった。芝浦グループは「市にも事情を説明して、早く3番目の施行者を決めて欲しかった」と憤る。同市は芝浦・西鉄グループから要望が出ていたことを認めている。

閉店したスーパー

 さらに2018年夏ごろの話。平成27年度の計画では、約118億円だった事業費が、いつの間にかそれが130億円に膨らんでいた。「10%増」――急激に内容の一部が高騰したとも思えず、考えられるのは何か不必要なものが組み込まれたこと。芝浦サイドは「事業費は当初の予定通りに収めないといけない」と繰り返し、修正を求めたが、それでも120億円台にしかならなかった。芝浦グループの役員会で建設コンサルが事業費の増大について、説明したそうだが、役員らは納得できなかった。

 

(つづく)

【東城 洋平】

再開発計画は西鉄新栄町駅の広さ約2haに、ホテル、マンション、高齢者住宅、駐車場などを建設、駅前広場の整備でにぎわいを創出する計画で、総事業費は約118億円(2015年度時点)。地権者は30数名で、芝浦グループも地権者の1人である。2016年度、事業資金の確保と保留床取得者などを確実にするため、ホテルと立体駐車場などは芝浦グループ、分譲・賃貸マンションと高齢者住宅は西鉄グループが建設代行者に決定していた。昨年9月、芝浦グループは準備組合に対し、このままでは事業計画への同意書が出せないと申し入れた。以降、事業継続に向けて協議は続けられていたが、同意に至らず。今年1月、準備組合は基本協定の解除を視野に入れた方針を決議した。1月末、芝浦グループに対し、同意書提出を求めたが、期限の2月15日までに提出されなかったため、2月16日をもって基本協定を解除。準備組合は損害賠償を求める予定がある旨を芝浦グループに通知している。

 

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