2024年04月26日( 金 )

福岡を活性化させた傑物伝アパマングループ代表大村浩次氏(23)

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IT時代の店舗はどこに向かうのか

大村 浩次 氏

 今は、自宅にいながらインターネットで住む部屋を探す時代。APAMANグループは、アパマンショップの店舗の今後のあり方をどのように考えているのだろうか。

 スカイプやラインなどのビデオチャットを使って、スタッフとお客さまが顔を見ながら不動産店舗から部屋の紹介をうけるサービスが広がりつつある。大村社長によると、アパマンショップでは10年前から、ビデオチャットを使って部屋を探している人の顔を見ながら、オンラインで店舗スタッフが部屋を紹介するサービスを始めていたという。

 APAMANグループは、お客さまが便利にサービスを受けられることが何よりも大切だと考えているため、自宅にいながらインターネットで部屋を探せるサービスを充実させてきた。店舗スタッフから部屋の紹介を受けられるサービスや、パソコンから賃貸物件を内覧できるサービスは、お客さまの声やアンケートをもとにしてつくっているという。また、アパマンショップの賃貸物件検索サイトが部屋を探している人にとって見やすく使いやすいことが大切なため、ホームページのデザインなどのクリエイティブに力を注いでいる。

 部屋を借りるときの手続きも、IT化が進んでいる。賃貸不動産会社が部屋を借りる人に伝えることが法律で決められている重要事項説明書の手続きがオンラインでできるようになるなど、法律も整いつつある。また契約も、どの業界でもデジタルデータで調印することが多くなってきた。国は、契約の電子化にむけて法律を急速に整えており、デジタルデータで契約して部屋を借りることができるようになった。賃貸あっせん事業で今まで「紙」を使っていた業務は、ほぼ完全にコンピューターやスマートフォンでやり取りできるようになると見込んでいる。

店舗は住まいのアドバイザーに

 大村社長は、AI(人工知能)や業務自動化システムのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用して仕事のIT化が進んでも、お客様と接する仕事は、今後も人が行う会社でありたいと考えている。そして、パソコンやスマートフォンからすべてのサービスが受けられるようになっても、お店に行って情報を聞きたいというニーズはなくならない。そのため、アパマンショップの店舗は、部屋を借りたい人への部屋探しの対面でのコンサルティングや、部屋選びで迷っている人に自分にあう部屋を見つけてもらえるように相談にのる住まいのアドバイザーの役割に変わっていくと予想している。店舗では、パソコンやスマートフォンだけで部屋を借りる手続きを済ませたいという人も、店舗に足を運んで情報を聞きたいという人も両方のニーズがあることを踏まえて、それぞれのお客さまに合った方法で対応していきたいという。

近くの店舗ですぐに対応できる便利さ

 アパマンショップの店舗は、部屋を探している人に賃貸物件を紹介するとともに、賃貸物件を管理するプロパティ・マネジメントや不動産オーナーへの対応も行っている。賃貸物件の管理や不動産オーナーの対応に関する仕事はとてもたくさんあり、全国各地の賃貸物件の近くにある店舗が対応している。ビルやマンションなどの賃貸物件は、建てたところから動くことはない。そのため、店舗で管理している賃貸物件の近くにスタッフがいて、何か問題がおこったときには、すぐに現地にいって対応することが必要だ。

 たとえばスマートフォンのアプリや数字認証でカギの開け閉めができる電子キーが使えるようになっても、まちがった数字を入れてしまいカギが空かないなどのトラブルが起きると、スタッフが現地に行ってカギを開ける対応が必要になる。また、隣の人の音がうるさいなどの近所とのトラブルでは、近いところにいるスタッフが現地に見にいかなければ対応できない。

 いまではインターネットにつないだカメラを使って、離れたところからパソコンの画面で現場を見る方法もあるが、部屋を借りている人や不動産オーナーに会って説明をして、気持ちをくんで対応するコミュニケーションは、ITテクノロジーには変えられず人でなくてはできない仕事だ。また、新しい人が入居するときには部屋の説明をして、退去した後に賃貸物件の状況をチェックすることも、スタッフが現地に行かないとできないことだ。

 最新のITテクノロジーを使いこなしても、スタッフが現地に行って得られる情報や足を運んで対応するスピード感には、まだまだかなわない。賃貸物件の近くに店舗があって、スタッフがすぐに対応できることは何にも代えがたいため、これからも全国のアパマンショップの店舗では、地域に根ざして不動産オーナーや賃貸物件の対応をしていきたいと考えている。APAMANグループは、業務のIT化を進めて効率化をはかる一方で、店舗では人ならではの仕事に力を注いでいく。

(つづく)
(取材・文・構成:石井 ゆかり)

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