2024年04月20日( 土 )

商号復活の「日本製鉄」~日本の鉄鋼業界独占を検証する

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 新日鐵住金から日本製鉄へ商号変更するまであと4日に迫った28日、新日鐵住金は持分法適用子会社だった山陽特殊製鋼(以下、山特鋼)の出資比率が15.3%から51.5%となり、子会社化が完了したと発表した。また同日付で山特鋼はスウェーデンの特殊鋼メーカー、オバコの全株式を新日鉄住金から譲り受け、完全子会社にした。今後は日本製鉄、山特鋼、オバコを含む3社で連携し、付加価値の高い特殊鋼分野でグローバル戦略を推進する決意を示した。

【表1】を見ていただきたい。日本の鉄鋼メーカーの売上高順位表および経営成績の表である。

~この表から見えるもの~
(1)の高炉会社について
・日本の高炉会社は新日鐵住金、JFEホールディングス、神戸製鋼所、新日鐵住金系列の日新製鋼の4社だったが、日新製鋼が2019年1月1日付で新日鐵住金の完全子会社となったため、3社となる。
・売上高トップは新日鐵住金の5兆6,686億円で当期純利益は1,950億円。2位はJFEホールディングス(以下、HD)の3兆6,786億円で当期純利益は1,446億円と前期比大幅な増加となっている。
・一方3位の神戸製鋼所の売上高は1兆8,811億円で、当期純利益は631億円。前期の赤字から黒字に転換しているものの、品質データ改ざん問題の影響を受けて厳しい経営が続いている。
・JFEHDと神戸製鋼所の売上高を合わせても新日鐵住金に届かない状況になっており、寡占化が進んでいる。今後データ改ざんで揺れる神戸製鋼所が業界再編の目玉となりそうだ。
(2)、(3)は新日鐵住金とJFEHDの電気炉系列子会社である。    
・JFEHDは1社しかなく、圧倒的に新日鐵住金系の電炉会社が多いのがわかる。山特鋼は持分子会社だったが、子会社となり、来期からはこの表から外れることになる。
(4)は高炉系列外の独立系の上場電気炉会社の売上高順位表である。
・トップは日立製作所系列会社の日立金属で売上高は9,883億円。当期純利益は前期比マイナスとなったものの、505億円計上しており、圧倒的な強さが目立つ。
(5)は非上場の電気炉会社(15社)である。
・経営成績を公開しているのは朝日工業、伊藤製鐵所、宇部スチール、三星金属工業、中山鋼業の5社のみとなっているが、厳しい経営状況となっているのがわかる。残り12社のホームページには経営績に関わる記述は見られなかった。今までは地域の名門だったのだろうが、今は厳しい経営状況に陥っているのではないだろうか。

<まとめ>
新日鉄住金から日本製鉄に商号が変わる4月1日まで後3日になったが、経営が厳しい神戸製鋼所を外国の鉄鋼メーカーが買収すれば日本の市場が脅かされることになる。M&Aを繰り返し今の圧倒的な地位を築いた日本製鉄が神戸製鋼所を経営統合する日は、意外と近いのではないだろうか。

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【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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