2024年04月19日( 金 )

地域に密着した不動産会社社長が見る福岡不動産業界の現在

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(株)オー・エイチ・アイ 井川 英治 代表取締役社長

 中洲のgate'sやAQUA博多などのプロパティマネジメントをはじめ、福岡の名だたるオフィスビル、商業施設の管理を行っている(株)オー・エイチ・アイの井川英治社長に、現在の不動産市況、福岡の状況などについて語っていただいた。

(聞き手:弊社執行役員・緒方 克美)

現在の市況は「中途半端」

 ――現在の不動産の市況をどのように分析されていますか。

(株)オー・エイチ・アイ 井川 英治 代表取締役社長

 井川 弊社はおかげさまで良い状況にありますが、全体の市況という意味では、今の状況は変な表現ですが「中途半端な時期」だと考えています。
 我々も含め、投資家の多くが将来的に価格が下がるだろうと思っています。行き過ぎに対する警戒感に加え、金融機関が融資を締め始めていることもあり、これから2~3年かけて価格が下がってくるだろうという読みがあるわけです。
 ところが、現実には一部を除き、まだ下がり始めていない。思惑と現実に乖離がある、そんな混沌とした中途半端な時期ではなかろうかと思っています。
 今、不動産を購入している方も無論たくさんいますが、機を伺って投資を再開しよう、あるいは続行しようと考えている投資家は、「もっと下がったら買う」「あと2、3年経ったら買う」「3年待つよ」と言い始めています。
 市況を俯瞰的にといいますか、トレンドのなかで見ている人はそういう風に思っている。でも、一部には値下げされて市場に出てくる物件も出始めました。
 繰り返しになりますが、値下がりに対する期待感はあるけれど物件は実際には下がっていない。まだ高い物件がたくさんある、という状況だと私は思っています。

 ――東京の不動産業界のトレンドについてはどれぐらい意識されていますか。

 井川 東京の流れはこちらにも来ますから、当然意識していますよ。市場としてイコールではないけれど、同じことをやっている以上、比較されますからね。

 ――昔と比べて、トレンドが流れてくるスパンは短くなっています。

 井川 東京がどれぐらいのキャップレートで取引されているのか。それがまったく同じだったら大半の方は東京で買うわけですよ。福岡は東京と差がなくなってきている。これは良くないことですね。

 ――中途半端な時期のなか、実際の売買はどういう状況でしょうか。

 井川 福岡県全体での動向はわからないですが、弊社においては売買自体は多いですよ。多いけれど難しい時期ですね。銀行も締めようとしていますし。ただ、やはり今の相場は高いと思います。バブルだと思っています。でも、バブルは弾けなければバブルではないんです。みんなが健全な状態なら、バブルではないですから。

広がり続ける都市間の格差

 ――不動産価格は10年ぐらいのサイクルがありますが、そこはどう分析されていますか。

 井川 過去の事例はもう通用しないですね。なぜかというと、人口減少が絶対的に始まっている一方で、インバウンド(訪日外国人観光客)需要というものがあるからです。インバウンド需要は5~6年前までは顕在化していなかったものです。そして、政府は2020年までにインバウンドを4,000万人にすることを目標にしています(2016年のインバウンドは約2,400万人)。これは経験したことがなく、これから経験することです。だから、過去の事例は通用しないと思います。
 ただ、リーマン・ショック以降、とくに私が感じているのは「都市間の格差拡大」。どこにでも投資していたような会社が、「都市を選んで投資する」という流れになっています。これで都市間の格差が大きく広がってきた。
 インバウンドが増えたことによって、今まで知られていなかった土地、たとえば観光地の価格が上がるというようなこともあると思います。今インバウンドの増加率で一番は香川県だそうです。おそらく元々の数が少なかった場所だから伸びているのだと思いますが、増加していることは事実ですし、これからも伸びる可能性がある。そのときに地価はどうなるのか。インバウンドの流入と人口減少が相まって局面が複雑化していますね。

 ――そういう格差があるなかで、福岡は良いといわれていますね。

 井川 格差はますます広がっていくと思いますが、そのなかで福岡は残っている。「東京と福岡」が良いとおっしゃる会社は多いですね。

海からの景観強化で福岡の魅力は強化できる

 ――社長自身は、福岡にどういうまちになってほしいとお考えですか。

 井川 福岡は海や山が近いところがすばらしいです。あとは人情があって叙情を感じるところは絶対に変わってほしくない。
 これから発展していくとするならば、海に向かってですね。個人的にいろいろなところで発言していますが、那の津の開発をぜひやってほしい。ウォーターフロントにオフィスやホテル、娯楽施設をつくって、海から見た福岡の景観を整備してもらいたい。シーホーク周辺はキレイですが、海側から船で天神に入ってくると倉庫街ですからね。那の津を開発すれば、ずいぶんと違う印象のまちになるだろうと思っています。海に開けたまちですし、船で入ってきたときの景観が良ければ、諸外国からの印象が大きく変わると思います。

 ――福岡で注目している地域はありますか。

 井川 注目している地域というわけではないですが、「住みたいまち」が変わってきていますね。今、福岡で一番住みたいまちは博多駅周辺だそうですよ。昔なら考えられなかった。そういう嗜好の移り変わりは常に追っていかなければと思っています。

【文・構成:犬童 範亮】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井川 英治
所在地:福岡市中央区天神4-6-7 天神クリスタルビル14F
設 立:2003年10月
資本金:1,100万円
TEL:092-733-2681
URL:http://www.ohi-pm.jp/

<プロフィール>
井川 英治(いかわ・えいじ)
1954年、愛媛県生まれ。早稲田大学政治経済学部を経て外資系海運会社に勤務後、(株)大井不動産入社。現在同社取締役会長および(株)ホークスタウンの社長も務める。趣味は読書と絵画鑑賞。

 

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