創業30年、積み重ねた信用と信頼専門工事会社職人と共に歩む

九州の都市開発をレポート｜まちづくりvol.3

2017年6月30日 13:04

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（株）ツキジ

営業職から職人に転身

（株）ツキジ築地隆仁社長

　福岡市南区に本社を置き、防水工事を中心にシーリング、塗装吹付などを専門に手がける（株）ツキジ。創業者は現在の代表取締役の築地隆仁社長である。地場の同業者には2代目、3代目が経営する老舗もあるが、同社は築地社長が一代で築きあげた“叩き上げ”の会社である。

　築地社長は工業高校を卒業後に医療器具メーカーに入社。営業職で優秀な営業成績を残すが、営業先の病院では大学卒という見えない壁に阻まれ、肩身の狭い思いをする。閉塞感を感じていたころ、建設工事を手がける職人と出会い、人生を変える転機を見つける。専門工事職で腕をふるい、己の腕一本で生活していく職人の姿を見て“我も”と一念発起。会社を辞め、専門工事業者を目指し、地場の防水工事会社に弟子入りする。一人前になるために昼夜問わず、がむしゃらに働いた築地社長は、苦労を苦労と思わない前向きな性格と、もともと手先が器用だったことも功を奏し、現場でも一目置かれる存在となった。

　1987年6月にシーリング事業を目的に築地工業を創業し、91年7月に㈲ツキジシーリングを設立する。シーリング事業から防水工事に軸足を移したことで、97年7月に現在の商号である（株）ツキジに変更した。必要とされれば、九州一円なら誰よりも早く現場に駆けつける行動力と、高い技術で名を上げていった。

時代を見据えた協力業者の社会保険加入促進

社屋1階に設置された会議室

　2012年、国土交通省は社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインを発表。建設業の所轄官庁である国土交通省と社会保険担当の厚生労働省がタッグを組んで、17年度の建設業者の社会保険100％加入に本腰を入れることなった。

　国交省が発表する以前から、築地社長は協力業者らに社会保険の加入を強く奨励してきた。協力業者のなかには、社会保険加入に対して知識を持たず、また、経営面の負担が大きくなるため必要性を感じないとの声を上げる人もいたが、「社会保険は必ず入りなさい。医療、年金など、いざというときの公的保障は絶対必要ですから」と説明してきた。会議室で説明会を開き、また、個人別にわかりやすく加入の説明を行うなど、親身になってバックアップした。築地社長は「社会保険に加入していない組織は何かあったときに補償も何もありません。業界においても人手不足が叫ばれるなか、社会保険加入は人材確保のツールにすべきでしょう。今でこそ、大手ゼネコンを中心とした元請業者が政府の方針に従い、下請業者へ加入の通達を行っていますが、私は、以前から、その必要性を感じて社会保険加入を推奨してきました。今、国の主導で業界が本気で取り組んでくれたことはこれからの業界にとってもプラスになるのではないでしょうか」と語る。

協力業者との強固な協力体制を目指して

　1995年に現在地に本社を新築した同社。この本社新築にまつわる逸話がある。「バブルが崩壊して不景気なのに、なぜ本社を新築するのか。無駄な経費を使わず、じっと動かず、体力を温存したほうがいい」と周囲は新築に反対した。だが築地社長は、“建築費が浮く今が好機である。ピンチはチャンスだ“と新築に踏み切った。さらに社屋の1階には協力業者を集めて、勉強会を開ける広い会議室を設けた。自分たちだけの社屋という意識なら、広いスペースの会議室は要らない。例えば倉庫として活用する手もあっただろう。しかし、情報を共有する場を設け、協力業者と切磋琢磨できる環境づくりに経営方針の舵を切った。

　社内の環境づくりの1つとして、2004年2月に九州では業界初となる品質マネジメントシステム（ISO9001）や環境マネジメントシステム（ISO14001）のダブル取得を行った。同社が取得したころは業界でもまだISOの知名度は低く、取組む企業は少なかったが、築地社長は「品質や環境対策に関する仕組みづくりがこれから必要であり、早期に取得し社内に深く浸透していくべき」と認証取得を即断したのだ。

　このように社内の環境整備と協力業者との関係強化に重きを置くことで、高いクオリティを持つ技術集団を形成してきた。築地社長は“高い技術は信頼の証”を常に意識しており、その信念にブレはない。その原点は築地社長が駆け出しの職人のころから現場で培ってきたもので「プロとして誇れる仕事を行うべき」という確たる理念によるもの。職人から経営者へと立場こそ変わったが、築地社長のプロ意識は変わることはない。

　現在、同社と協力体制をもつ職人は九州一円に約200名。社員の奮闘、協力業者との連携強化で16年6月期の売上高は約10億円となった。今ではスーパーゼネコンも一目置く専門工事会社に成長している。近年では防水工事に限らず、シーリング、塗装吹付、そして建物のリニューアル工事など事業の拡大を図っている。しかし、事業の幅を広げつつも、防水工事という専門分野が同社の柱なのはゆるぎない。創業30年を迎えた同社。これからも建設工事業に欠かせない専門業者として歩んでいく築地社長の信念に迷いはない。

【道山　憲一】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：築地　隆仁
所在地：福岡市南区屋形原3-38-12
創　業：1987年6月
設　立：1991年7月
資本金：2,000万円
ＴＥＬ：092-565-1366
ＵＲＬ：http://www.ts-tsukiji.com