2024年04月25日( 木 )

「ふるさと納税」でiPadやアップルウォッチ届かず 「ギフト券で代替」に寄付者の怒りおさまらず~福岡県直方市

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 福岡県直方市のふるさと納税の返礼品が「1月を過ぎても届かない」と、寄付者からの問い合わせが2月ごろから市に相次いでいた。市は「4月中に届けるめどが立たない」との理由で約1,500件の寄付者に対し、製品価格に相当するギフト券計3,095万円分を寄付者に贈ることを決定し、この騒動の幕引きを図ろうとしている。

 問題の返礼品はアップル社のiPadやアップルウォッチ、バルミューダ製家電など、いずれも市場で人気の家電品だ。

 市は、昨年12月3日~31日の間「遅くとも来年1月中に届ける」とし、前述の人気家電などを返礼品にして寄付を募集したところ、約8,000件の申し込みを受けた。

 この「人気家電返礼品企画」により、市は約11億円の寄付金を集めた。昨年の市の寄付総額が約15億円であることを考えると、わずか1カ月の間に昨年の寄付総額の7割を超える寄付金集めに成功したことになる。

 当初の予定通り、1月中にすべての寄付者に届けることができていれば、約4億円の寄付金が約15億円になっていた。

 しかし、2月上旬になっても寄付者の元に返礼品は届かず、市に問い合わせが頻繁とくるようになった。市は「商品の入荷遅れにより、ご迷惑をお掛けしております。順次、発送いたしますので、しばらくお待ちください」などと寄付者に説明していたが、日を追うごとに、寄付者たちから「詐欺ではないか」という抗議が殺到するようになる。

 蓋を開けてみると、同企画により集めた寄付件数は約8,000件、そのうち、3月初めまでに発送されたのが約10%で、約90%の7,000件余りが未発送だったのだから、寄付者が「新手のふるさと納税、詐欺被害では」との不安を感じたり、市の対応に憤ったりするのもうなずける。

 市は3月に「4月中に市が責任をもって対応する」という旨のメールを寄付者らに発信。寄付者らに真摯に対応し、入手できた品から順次発送しているが、いまだ約15,000件が未発送である。

 4月9日、市は4月中に884件の返礼品の発送をするのは現実的に不可能と判断。「信頼を裏切る結果となり、深く反省し、心からお詫び申し上げます」と謝罪するに至った。

 前述の884件に対しては製品相当額のギフト券で代物弁済する方針を明らかにしているが、寄付者からは「残念だ」という意見が多くみられる。

 殺到する抗議の中、市はギフト券による代替で幕引きを決定したが、あまりにもお粗末な顛末に「ふるさと納税 返礼品システム破綻自治体だ」と気持ちの治まらない寄付者からの声は多い。

 ふるさと納税は、居住する都道府県や市区町村以外の自治体に2,000円以上寄付すると、寄付額より2,000円を超えた額が所得税と住民税から差し引かれる制度である。「故郷や、好きなスポーツチームの所在地があるから」など、自身が応援したい自治体に寄付(納税)ができるシステムが広く納税者に支持されるようになった。

 福岡県直方市も地元生産品などをメインに同市民、出身者からの寄附を集めるなど、健全な運営が長く続いていたが、昨今の「ふるさと納税ブーム」に便乗。同市に所在(本社は佐賀県小城市)する業者に企画・運営を委託したことから、企画は僅か半年で、成功から破綻へと向かってしまった。

 直方市は北九州市のベッドタウン。近年は関取・魁皇の出身地として、また今年から運行を開始した平成筑豊電鉄「ことこと列車」の始発駅としても全国から注目を浴びていただけに「故郷」のイメージダウンに、心を痛める直方市民は多い。

 今回の直方市の例は、委託業者選定に問題は無かったか、管理、監督は十分だったかなど、全国の自治体に課題を投げかけることとなった。

【相崎 正和】

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