2024年04月19日( 金 )

請願駅はこうして生まれた JR糸島高校前駅に期待される役割(前)

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さらなるアクセス向上へ

 福岡市中心部から電車や車で40分程度という近距離にありながら、豊かな自然を内包し、観光地として全国的に知名度を上昇させている糸島市。近年は、九州大学伊都キャンパスの誕生により、大学関係者を始めとする市外からの転入者が増加するとともに、住宅開発や働く場所の整備などが急速に進み、エリアを絞ったかたちでの都市化(=新たな中小規模商圏の誕生)が進行している。

 観光地としてだけでなく、学術研究都市として今後さらに発展していくために、糸島市が解消すべき課題は、交通アクセスのさらなる向上だ。車での移動に関しては、福岡市と糸島市を結ぶ今宿道路の有田中央交差点~真方交差点間が、2019年1月27日に開通。これにより、国道202号線バイパスが全線開通となり、両市間の距離はさらに縮まった。

 一方で、問題となるのは電車での移動だ。正確にいうなら、駅から住宅までの距離である。前述の通り、九大・伊都キャンパスへの移転・統合にともなう急激な人口増に対応するため、受け皿となるアパートやマンションの建設が急ピッチで行われたが、交通アクセスは二の次だったため、住まいから学校、住まいから職場までの通学・通勤の便が必ずしも良いとはいえない状況にある。

 とくに、「糸島市前原東土地区画整理事業」(開発面積20万2,000m2、全212区画)として計画された新興住宅地「コットンヒルズ伊都の杜」は、JR筑肥線「筑前前原駅」、同「波多江駅」まで徒歩20分。新住民にとって、アクセスが良いとは言い難いものだった。JR「糸島高校前駅」の開業は、同住宅地の住民にとって、念願の「最寄り駅」の誕生でもあったのだ。

始まりは陳情から

開業までの歴史を振り返る月形市長
テープカット

 

 JR糸島高校前駅の誕生は1982年3月、当時の前原町長が旧・日本国有鉄道の門司鉄道管理局宛に「浦志地区に新駅を設置してほしい」と陳情を寄せたことに端を発している。同様の陳情は、JR九州などに対しても継続的に寄せられ、2001年には「前原市総合計画」に浦志地区に新駅を設置する旨が記載された。新駅の設置に向けた具体的な活動は、筑肥線新駅建設促進会が主体となって行い、37年の歳月を経て19年3月16日に、悲願の開業となった。

 開業に際しては、オープニングセレモニーが開催された。主催者挨拶には筑肥線新駅建設促進会会長であり、糸島市長でもある月形祐二氏が登壇。「足かけ37年。地域の皆さま、糸島高校の生徒や関係者の皆さま、多くの皆さまのご尽力や熱意の賜物で、本日めでたく糸島高校前駅の開業を迎えることができました」と喜びを語った。

駅および周辺エリアの発展に期待を寄せる古宮常務

 また、実際に駅の運営を手がけるJR九州からは、取締役常務執行役員・鉄道事業本部長・古宮洋二氏が参加。「線路の切替工事を担当していた社員から『開業前から多くの方が集まっておられました』との話を聞き、非常に嬉しく感じます。糸島高校前駅は、JRとして64番目の新駅です。近年新設された駅は、利用者数が伸びている駅が多く、九大学研都市駅は毎年3~4%利用者数が増加しております。糸島高校前駅も、駅周辺環境などを見ると、九大学研都市駅と同様に、多くの方に利用される駅になると確信しております」と、同駅の発展に自信をのぞかせた。

(つづく)
【代 源太朗】

(後)

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