2024年04月25日( 木 )

SDGs で北九州市はどのように生まれ変わるか?(後)

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北九州市長 北橋 健治  氏

経済産業の発展を最優先に

 ――北橋市長は1月に行われた北九州市長選挙で4選をはたされましたが、市長としての4期目の抱負は何でしょうか。

 北橋市長 市長としてのこれまでの3期12年は、「人に優しく、元気なまちづくり」をスローガンに掲げ、いろいろと努力してきました。市長4期目になって、改めて「北九州市は住み良いまちだな」と感じるようになっています。本市は、100年前に全国の勤労者が集まってできたまちであり、日本の産業近代化の先頭に立っていたまちです。市民などが行政や政治を動かして、非常に快適な住み良いまちをつくってきた歴史があります。

 ただ、昔の産業構造のままでは、どんどん人口が減り続けていきます。「どうやったら市としてさらに経済成長できるのか」を考えないと、人口減少に歯止めがかかりません。さらに住み良い社会をつくるためには、エンジンとなる経済産業をよりたくましく、前に発展させることが最優先だと考えています。

 ――北九州空港の活用や利便性向上を求める声は多いですが・・・。

 北橋市長 近年、航空貨物が重視される時代になっています。北九州空港は24時間使用可能な空港であり、16年に東九州自動車道がつながったことで、国内外の多くの貨物便を受け入れるポテンシャルが生まれています。これからは本市を「物流のまち」として前に進めていきます。今、その追い風が到来していると考えています。市では、将来的に、北九州空港を「人と貨物が一番集まる場所にする」ためには、どうすれば良いかということについて、議論を重ねているところです。

 本市に進出したあるIT系企業の社長が、「企業の進出先選びでは、良い人材を安定的に確保できるかが決め手になる」とおっしゃっていました。人材の教育や育成には時間がかかりますが、本市には、明治以来の産業近代化の拠点だった遺産として、しっかりとした人材育成システムが根付いています。この強みを生かして、ハイテクなどの企業誘致にさらに力を入れていく考えです。

 「ものづくりのDNA」も強みです。たとえば、(株)安川電機を始め、世界最先端のロボット開発技術が市内の企業にはあります。北九州空港や洋上風力発電、そしてロボット産業などは、他都市にはない強みになります。そして、環境に関する技術、ネットワークもある。これらを組み合わせて、まずは経済成長をたしかなものにしたいところです。

 文化芸術やスポーツは、まちの賑わいに欠かせない要素です。本市は20年の「東アジア文化都市」に選ばれています。こういった機会をテコにして、まちの魅力を情報発信し、まちのイメージアップを図ることを通じて、人の賑わいにつなげていきます。

治安は劇的に改善されている

 ――“イメージアップ”と言いますと?

 北橋市長 本市には、暴力団の抗争などといった、かつての“負のイメージ”がいまだに残っています。実際には、市民などの努力によってこうしたイメージは劇的に改善されているのですが、対外的にはあまり浸透していません。私から見れば、「世界で一番安全なのではないか」と思えるぐらい、劇的に治安は改善されているんです。「ピンチをチャンスに変えたい」という思いがあります。まちのブランドイメージを刷新させることは、人や企業などが集まる大きな力になるからです。

 ――北九州市を「修羅の国」と呼ぶ向きもあるようですが・・・。

 北橋市長 イメージをうまく伝えるのは、なかなか骨が折れますね(笑)。昔のままのイメージをもった人々がいるのは事実ですが、これは何としても払拭し、乗り越えたいところです。

 本市はいずれ、住み良いまちに変わっていくと確信していますが、そのためには、本市が新しい情報を常に発信し続けるなどの、努力の積み重ねが大事です。本市は、50歳以上の方が住んでみたいまちに2年連続で日本一に選ばれています(出典:宝島社「田舎暮らしの本」)。子育て支援では、政令市中で7年連続トップです(出典:NPO法人エガリテ大手町による「次世代育成環境ランキング」)。このように、かつての負のイメージというものは、かなり払拭されてきたという実感があります。

 だからこそ、そういう本市を揶揄するような冗談がいえるようになってきたのだと考えています。治安の改善を含め、まちが着実に良い方向に向かっているがゆえに、そういうジョークも出てくるようになっているということではないでしょうか。我々がすべきことは、そういうことはあまり気にせずに、我がまちをさらに魅力あるものにして、それをしっかりと発信し続けることに尽きると思っています。

(了)
【大石 恭正】

<プロフィール>
北橋 健治(きたはし・けんじ)

1953年3月、兵庫県西宮市出身。78年に東京大学法学部卒業。86年に衆議院議員初当選後、6選をはたす。94年には大蔵政務次官、98年には衆議院環境委員長を務めた。2007年に北九州市長に就任。以後4選。好きな言葉は「ピンチのそばにチャンスあり」。
 

(中)

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