2024年03月29日( 金 )

大塚新市政に不信払拭への注目が集まる「ふるさと納税 返礼品未発送問題」~福岡県直方市

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 2019年4月9日、直方市の謝罪会見によって大きくクローズアップされる事となった「ふるさと納税返礼品未発送問題」。
悪いのは直方市政なのか?伝票記載ミスや返礼品発送遅れを引き起こした委託業者A社なのか?そもそも「ふるさと納税」制度に問題は無いのか、経緯を振り返る。

経緯:直方市議会議事録ならびに直方市総合政策部長への取材より(要約)

□2015年8月~ 9月頃 直方市「ふるさと納税」開始  同年12月末  寄付金額5,000万円
□2016年1月~12月末 昨年の実績を踏まえ年目標額を一億円と設定  寄付金額6,000円
□2017年1月~12月末 議会は「返礼品競争には加担しない方針」を示す 寄付金額3,000万円
□2018年1月~12月末 市は10月にA社と業務委託契約を行う。    寄付金額15億円

 当初、同市は「ふるさと納税」施策に対応する為、ふるさと納税ポータルサイトの「ふるさとチョイス」に業務委託。すると、わずか半年未満で5,000万円程の寄付金を獲得したため、1年では1億円も可能だろうという判断から2016年度から年間1億円の寄付金を予算見込にあげていた。

 しかし、翌年は6,000万円と予算割れ。市は役所のIT化を進めており、行政側は議会より「ふるさと納税」対応のためのIT化支出費について、その損益バランスの追及を受け始める。

 17年、市は返礼品競争に加担しない方策をとるが、その結果3,000万円と予算を大きく落としてしまう。

 18年には「ふるさと納税」制度において他行政に流れる住民税と同市に流れる住民税について議会から行政への追及が始まる。同年 6月~10月の間、市行政への追及は激烈であった。

 なんとか「ふるさと納税」制度により他行政に流出する住民税との収支バランスをフラット以上にしたいと考えた行政は10月 1日、A社と随意契約を締結した。

 19年 1月頃より返礼品未達の苦情が始まり「詐欺ではないか」との声も多く、市長市議選を前にした 4月 9日に謝罪会見を行い、事態の幕引きを図った。しかし、その謝罪会見の場には壬生市長(当時)の姿は無く、副市長の三原ゆかり氏(当時)の涙ながらの会見に直方市民の間では「市長は何故謝らないのか!」「直方に納税してくれた寄付者の方々に恰好が付かない」との憤りの声が溢れていた。

 同謝罪会見日に「市は2月上旬、A社からの金銭の前渡し要求にも応じて、A社を支援したが遅配送問題を解決できなかった」との報道が流れた事で、直方市民の間では、「市とA社との間に不適切な金銭の流れがあるのでは?」「市がA社から要求されていた前渡し金は2億円らしい」「直方にA社を紹介したのは佐賀県選出の大物議員ではないか?」などの話が、まことしやかに語られるようになる。

 19年4月21日の統一地方選挙に無所属新人で立候補した大塚進弘氏(元副市長)が現職の壬生市長を破り初当選。直方市では、市長選で新人が現職を破ったのは初めての事。前・三原ゆかり副市長は市長の交代を機に4月25日付けで「一身上の都合」を理由に辞職した。

 直方市総合政策部長は弊社の取材に対し「金銭の受け渡しは、A社と交わした業務委託契約上、有り得ない」ときっぱりと否定している。

 市長の交代はゴールデンウイーク直前となり、今月より大塚新市長を首長とする市政がスタートする。大塚市長は当選確実となった際、カコミ取材で「ふるさと納税返礼品未発送問題についても徹底的に追及して行く」と力強く意気込みを語っていた。

 本件で直方市が負った不信を大塚新市政が払拭できるのか、注目が集まる。

【相崎 正和】

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