2024年03月29日( 金 )

M&A戦略でグループ躍進の礎を築く(前)

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西部ガス(株)(元代表取締役会長) 取締役相談役 田中 優次 氏

ガス、電気の小売自由化で競争が激化するなか、西部ガス(株)はM&A戦略を積極的に推し進め、グループ化による事業拡大を図っている。グループ化の礎を築いたのが、4月1日付けで代表取締役会長から取締役相談役に就任した田中優次氏である。田中氏のこれまでの事業戦略とグループ化への思いなどを聞いた。
(聞き手:弊社代表・児玉 直)


グループ化には積極的でなかった社風

 ――2000年代には、九州電力(株)のオール電化の攻勢に対して、西部ガス(株)としては対抗策を練っておられたと思いますが、2011年の東日本大震災で九電の攻勢も弱まりました。ここへきて競争が激しくなるなか、M&A戦略を推し進め、中華料理の老舗・(株)八仙閣を買収されたのは、田中相談役が取締役経理部長のころでした。今となってみると、M&Aの戦略が西部ガスグループ躍進の礎になったと思います。

田中 優次 氏

 田中 八仙閣の話をいただいたのは2004年でした。中華料理は火力が勝負ですから、ガスが向いています。しかも、有名な老舗中華料理店の話でしたので、デューデリジェンス(M&Aなどで投資する際、企業の収益性やリスクなどを詳細に調査すること)を3カ月で実行して、取締役会に上げました。役員全員の賛成を受けて、そこで買収が実現しました。
 私より前の経営者は、子会社を増やすことに対して、あまり積極的な考えではなかったと思います。私は、グループ内でさまざまな事業を手がける体制を構築すれば相乗効果も期待できますから、いろいろな子会社をもつべきだと考えていました。

 ――人口の大幅な増加が見込めない今日、本業のガスだけでなくM&Aで、ガスと連動できる分野を拡大していく。中期経営計画のなかでは、ガスエネルギー以外の売上を15年の20%から26年には50%まで引き上げると打ち出しておられます。
 田中 この事業計画のなかには、発電事業も入っています。ところが、発電事業は我が社だけでやれるほど、機は熟していません。九電さんと一緒に事業をしたいと思っているのですが、発送電分離や、今は少し落ち着きましたが原発案件での対応などもあるでしょうから、今後の方向性を見守っている状態です。

ロシアからLNGを輸入販売も視野に

 ――発電はガスによるものですね。
 田中 北九州のひびきLNG(液化天然ガス)基地の隣接地で、天然ガス発電事業を計画しています。最大168万kWの発電所が建設できるように環境アセスメントを完了させました。ただ、これがいつごろ動き出すのか、まだ見えていません。

 そういうなかで、ロシア最大の独立系ガス生産企業であるノバテク社と、ひびきLNG基地を活用し、北極海航路経由のアジア向けLNG輸送を最適化するための連携ビジネスについて検討を開始する旨の覚書を締結しました。これと並行して、ひびきLNG基地の拡張についても検討を進めていきます。
 基地のタンクを増やして、それで積み替える。タンクを貸すだけの商売もありますが、LNGを買って転売したりトレーディングしたりなど、いろいろなことをしながら、売上を伸ばしていこうと考えています。これが現実的になってきました。

(つづく)
【宇野 秀史】

<COMPANY INFORMATON>
西部ガス(株)
代 表:酒見 俊夫(代表取締役会長)
      道永 幸典(代表取締役社長)
所在地:福岡市博多区千代1-17-1
設 立:1930年12月
資本金:206億2,979万円
売上高:(18/3連結)1,966億2,100万円
U R L:http://www.saibugas.co.jp

<プロフィール>
田中 優次(たなか・ゆうじ)

1948年2月生まれ、青山学院大学経営学部卒業。72年4月西部ガス(株)入社、98年7月総務広報部広報室長就任。2000年6月同役職で理事就任、02年6月取締役、05年6月常務歴任。07年6月専務取締役、08年代表取締役社長、13年4月には代表取締役会長歴任。19年4月取締役相談役に就任、6月には取締役を退任して相談役に就任予定。

 

(中)

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