2024年04月19日( 金 )

SDGsは「持続可能な企業活動」への行動を促す枠組み

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日鉄エンジニアリング(株)
CSR・広報部長 折笠 光子 氏
総務部北九州総務室長 樋口 哲朗 氏

日本製鉄(株)(旧・新日鐵住金(株)、2019年4月1日に社名変更)のグループ会社・日鉄エンジニアリング(株)の折笠光子・CSR・広報部長と樋口哲朗・総務部北九州総務室長に、SDGsへの取り組みについて聞いた。

SDGsは「ビジネスチャンス」

 ――企業として、SDGsにコミットするメリットをどうお考えですか。

大規模沖合養殖システム(写真提供:日鉄エンジニアリング)

 折笠 SDGsが掲げる17の目標は、将来のリスク回避に役立つと同時に「ビジネスチャンス」だと捉えています。昨年のCSR報告書では、SDGsに貢献している事業として、「大規模沖合養殖システム」「CDQプラントの海外展開」「一般廃棄物溶融スラグの肥料化」という3つの事例を紹介しました。自分たちの商品や活動をSDGsの枠組みで整理したのは、実はこれが初めてです。これらのプロジェクトは、そもそもSDGsとは関係なく進めていたものです。

 弊社では、「お客さまに最適なエンジニアリングソリューションを提供」することを企業理念に掲げていますが、社会やお客さまの課題解決に取り組むのは、いわばエンジニアリング会社の使命です。現在、AIなどを活用した「デジタルトランスフォーメーション」に力を入れていますが、これも、生産性向上や働き方改革、省エネ・省資源といった世の中のニーズに応えるという意味で、SDGsへのコミットメントの1つだと考えています。

 ――なかなかコミットできない企業もあるようですが、SDGsへのコミットメントを整理するうえでの苦労などは。

折笠 光子 氏

 折笠 それが、案外簡単にできました。我々は「製品を売る会社」ではなく、「ソリューションを提供する会社」ですので、ほとんどの事業がSDGsに関係するといっても過言ではありません。たとえば、「省エネをしたい」とか「ゴミ処理で困っている」などのお客さまに対して、ソリューションを提供するのが我々の仕事であり、そのほとんどがSDGsで整理できます。

 現在、次のCSR報告書を作成中ですが、2018年度の主な活動として、「木鋼ハイブリッド」「地熱発電」「災害廃棄物処理」を特集する予定です。これらもSDGsのために、新しく何かをやったということではありません。

 SDGsへの対応が、会社の売上や収益にすぐに結びつくわけではありませんので、なかなか社員の腹落ちが進みづらい面はあります。「社会の動向や課題に対する感度、アンテナを高くしておかないと、世の中から取り残されてしまう」という危機感を共有し、社員をどう巻き込んでいくか、まだまだ道半ばというところです。

 SDGsの前には、MDGs(ミレニアム開発目標)が提唱されていましたが、正直、日本ではあまり浸透しませんでした。SDGsは、途上国だけでなく先進国も対象に加わったこと、カラフルに大変わかりやすく整理されていることなど、日本の企業にとっても使い勝手が良く、社外の方々とも、この共通の枠組みで話ができるようになりました。

 社会の動向や課題にしっかり対応していくことは、企業が存続していくうえで必須ですが、それは別にSDGsという言葉を使わなくてもいいんです。CSRでもいいしESGでもいい。私は、30年後、50年後に「どういう企業でありたいか」を考えていくうえで、SDGsは1つのわかりやすい指標だと認識しています。

 樋口 「SDGsにどうコミットして良いかわからない」という企業があるとうかがいましたが、私は「あらゆる企業は、大小何らかの影響を社会に与えており、正(プラス)の影響を大きく、負(マイナス)の影響を小さくすること、それが企業の社会的責任」だと理解しています。たとえば、豆腐屋さんの場合、ただ「ウチは健康に良い食品をつくっています」だけでは足りなくて、いかに社会に対して良い影響を与えているか、それをどう大きくするかということを整理する必要があるわけです。

SDGsを会社経営に織り込む

 ――企業の規模やテクニックは関係ない?

 折笠 ないと思いますね。かえって中小企業の方が、ステークホルダーを特定しやすく、活動の優先順位をつけやすいのではと思います。

樋口 哲朗 氏

 樋口 SDGsへのコミットメントと発信は、多少テクニック的な部分はありますが、中身をどう充実させるかが大事です。当然、“SDGsウォッシュ”(うわべだけのSDGs)ではダメです。

 折笠 弊社では、CSR報告書を専門家である第三者に評価していただいています。厳しいご意見をいただくこともありますが、ご指摘を踏まえ、社内で議論をしながら、PDCAで回して改善しています。

 SDGsは、30年後の世界のありたい姿、目標に向かって、国や政府、企業、NGO、その他あらゆる人々が、それぞれの立場で「どんな貢献ができるのか」を考える枠組みだと理解しています。17の目標、169のターゲットすべてに取り組む必要はないし、そんなことできません。CSRという言葉は「企業の社会的責任」と訳されてしまうので、何か「上から言われてやらなくちゃいけないこと」みたいに捉えられがちですが、SDGsはあくまでも、グローバル社会に生きる私たち皆の目標であり、企業の自発的なコミットメントです。「SDGsのためにやらなきゃ」みたいな「やらされ感」をともなうものではありません。

 樋口 「持続可能な企業活動」を突き詰めていくと、自ずとSDGsにコミットすることになるわけです。私は「SDGsに取り組んでいる」という言葉自体に違和感を覚えます。「目標」というより「指針」のようなものなので。

 ――コミットメントに「終わり」があるわけではない?

 折笠 そうですね。グローバル社会はものすごいスピードで動いていますし、社会課題はこれからもどんどん変化していきます。私どもの当面の課題は、サステナビリティ「持続可能性」の視点を、会社経営にどう織り込んでいくかだと思っています。

 ――他社へのアドバイスなどあれば。

 折笠 あまり難しく考えず、まずは今までの取り組みをSDGsで整理してみたら良いと思います。どんな業態の企業であっても、案外うまくいきます。 

【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATON>
日鉄エンジニアリング(株)

代 表:藤原 真一
所在地:北九州市戸畑区大字中原46-59(北九州技術センター)
設 立:2006年7月
資本金:150億円
TEL:093-588-7181
URL:https://www.eng.nipponsteel.com

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