2024年04月16日( 火 )

「3週間無料」―ネット求人情報サイトでトラブル頻発中

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 「掲載から3週間は無料」――このような営業トークから始まるネット求人情報掲載サービスをめぐり、「全国的にトラブルが頻発しており、福岡でも相談は多い」と福岡市内の弁護士は語る。契約に関する苦情を申し立てても、巧妙につくられた契約書に基づき、正当性を主張する業者に泣き寝入りを余儀なくされる事業主が多いという。裁判で争うほどではない絶妙な金額設定に、被害を訴える事業者から相談を受けた弁護士もお手上げ状態。その内情を取材した。

 求人情報の掲載をめぐり、トラブルとなっているサイトを覗いてみると、一見すれば、ネット上でよくある「求人情報検索サイト」だ。全国の求人情報が掲載されており、都道府県や職種などで検索すると該当する情報がヒットする。運営会社は東京都に本店を置く会社で、業務提携先が関東や関西に複数あると記載されている。

 契約内容や掲載費用をめぐり、「話が違う」と被害を訴えるのは福岡県のA社。A社によると、サイト運営会社から「求人情報をサイト上に掲載しませんか」という旨の電話営業があり、掲載から3週間は無料で、継続して掲載を希望する場合に年間掲載料45万円が発生するというもの。無料期間が終了する前に、電話で有料掲載するかどうかの意思確認をすると説明を受けたという。「無料であれば掲載してもいい」と判断したA社は掲載を申し込んだ。

 トラブルが起きたのは、掲載開始から3週間後、つまり無料掲載が終了するタイミングだった。当初、サイト運営会社は電話で有料掲載の意思確認をするとしていたが、実際は文書での通知に加え、解約申込書が到達したのは解約期限ギリギリ。A社に解約申込書が届いたのは無料掲載終了日の午後だった。その翌日の午前に通知に気づいたA社は解約申請書を運営会社に送付したが、運営会社はわずか数時間経過したことを理由に、解約は無効だとして、費用45万円を請求した。納得いかないA社が支払いを拒否すると、2週間後に東京地方裁判所から訴状が届いた。サイト運営会社が未払費用を請求してきたのである。

 福岡県のB社も同様だ。3週間の無料掲載だけを考え、申し込んだ。3週間後に届いた解約書類に気づかず、解約期限を過ぎた。サイト運営会社に掲載料を支払う意志がないことを伝えたが、解約期限を過ぎたため、解約は無効だとされ、法的手続きを取られた。東京地裁で裁判が進む中、訴状到着から2カ月後、原告がすべての訴えを取り下げたことでことなきを得た。B社は「サイト運営会社が訴えを取り下げた理由はわからないが、そもそも最後まで戦うつもりはなかったのではないか」と振り返る。

 悩ましいのが裁判を受けて立つかどうか。相手方の請求金額が少なくても、裁判で争うとなれば着手金など弁護士費用がかかる。それを考えると裁判で勝って、不当請求だという判決が下っても相談者にメリットはない。「この45万円という金額が絶妙な設定だ」とある弁護士はいう。意味のない争いなら、支払ったほうが良い。そう思わせれば、サイト運営会社の勝ちである。

 疑問なのは、求人サイトとして、機能しているのかという点だ。A社、B社ともに求人情報掲載後、応募などの問い合わせは1件もなかったという。人材採用に有効であれば、費用対効果は認められるはずだが・・・。サイトを眺めて違和感を覚えたのは、約850件ある求人情報に社名や連絡先が一切記載されていないこと。掲載されているのは、条件、待遇とおおまかな勤務地住所のみ。問い合わせ先が記載されていないということは、サイト運営会社を経由して掲載企業に応募者の情報が通知される仕組みだと推測される。

 筆者は調査のため、求人応募欄に投稿したところ、自動返信で筆者のアドレスに添付のメールが届いた。「担当から連絡させる」という内容だが、その後3週間以上経過するが何の連絡もない。

 ネットで検索すると、数年前から同様の被害が複数報告されており、今回トラブルとなったサイト以外にも複数存在することがわかった。無料だからといって、油断はならない。詳しく契約内容を把握せず契約してしまわないように注意していただきたい。

 なお、福岡県弁護士会では5月30日、「求人広告トラブル110番」として、広告発注者を対象とした無料電話相談を受け付ける。

 

【東城 洋平】

求人広告トラブル110番~いつの間にか有料に~
○相談実施日時 2019年(令和元年)5月30日(木)
        午前10時~午後4時
○相談電話番号 092-724-2644(当日限り)
○相談料    無料(通話料のみ)

▼関連リンク
求人広告トラブル110番~いつの間にか有料に~(福岡弁護士会)

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