2024年04月25日( 木 )

宇部市の旧山口井筒屋宇部店跡購入を検証する

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 (株)井筒屋(本社:北九州市北区、影山英雄社長)は、昨年7月31日、山口井筒屋が運営する宇部店(山口県宇部市)、連結子会社のコレット井筒屋が小倉駅前で運営するコレット(北九州市北区)、黒崎店(北九州市八幡西区)の3店舗を閉店すると発表。宇部店は昨年12月31日、コレットは今年2月28日に予定通り閉店した。

 ただ、5月31日に閉店予定だった黒崎店については、(1)北九州市および地元からの営業継続の要望が多いこと。(2)同店舗が入る商業ビルの管理会社である(株)メイト黒崎が、負担となっていた家賃引き下げおよび4階から7階の返却に応じ、8月1日より販売効率の良い1~3階で営業を継続することになった。契約期間は2022年5月31日。

 

 【表1】を見ていただきたい。

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~この表から見えるもの~

 宇部市はかつて炭鉱の町として下関市につぐ人口を誇っていたが、現在は合併を繰り返した山口市に2位の座を譲っている。

 山口県には下関市にある下関大丸、山口市にある山口井筒屋、宇部市に山口井筒屋宇部店(以下、宇部井筒屋)の3つのデパートがあった。

 しかし昨年7月、井筒屋は宇部市の中心市街地にある宇部井筒屋を12月末で閉鎖すると発表した。久保田后子宇部市長にとって一大事であった。市長自ら井筒屋に出向き、閉鎖を取りやめるように要請したが、すでに公表しており、予定通り閉鎖することが決まった。

・そのため久保田市長は、宇部商工会議所の安倍研一会頭に宇部井筒屋の購入をもち掛けたものと推測される。地元関係者によると、市長の意向を忖度した安倍会頭は、商工議所は親睦団体であり、不動産事業に手を染めるべきでないとの説得も聞かずに、宇部の経済を活性化するためには、宇部商工会議所が動くしかないとの考えから、10月3日、閉店後の井筒屋敷地の購入を表明したという。

・宇部井筒屋が閉鎖後の2月19日、井筒屋から旧宇部井筒屋の跡地を宇部商工会議所に売却することが取締役会で承認されたと報告を受け取った。安倍会頭、久保田市長にとってはまさに絶頂の時だったのではないだろうか。

・3月26日、宇部商工会議所の臨時議員総会が開催されたが、評決の結果、反対28票、賛成18票、棄権2票、安倍会頭のもとに46人分の白紙委任状が届けられていたが、賛成票と取り扱わずに否決と判断し、自分に対する不信任と受け止め、辞任を申し出たという。しかし副会頭4人に説得され、5月の議員総会まで引き続き会頭にとどまることになった。

・安倍会頭の落ち込みを見るに見かねた元会頭の光井一彦氏と千葉泰久氏の2人(ともに宇部興産出身者)が発起人となり、会議所会員に呼びかけ、38法人と6個人から集めた1億3,620万円を宇部市に寄付したと報道されたが、地元関係者の話によると「大口2社によるもので、宇部興産は寄付していないと聞いている」と語った。

・5月27日にすべてが集中している。本当に偶然なのだろうか。宇部商工会議所の安倍研一会頭が辞任。新会頭に宇部興産顧問の杉下秀幸氏(65歳)を選任し、同日付で就任。しかし宇部井筒屋跡地の購入に反対した柳屋芳雄副会頭は辞任しており、宇部商工会議所の受けた傷跡は大きいようだ。

・宇部市の議会では財産取得の議案が承認された。それを受けて井筒屋は、旧宇部井筒屋を売却することが5月23日開催の取締役会で承認されていることを公表。

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 【表3】のように厳しい経営状況が続いているが、井筒屋にとっては朗報だったいえよう。黒崎店の継続を決めたことから、本店と山口店(山口市)の3店舗で営業することになる。

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<まとめ>

 安倍研一前会頭は久保田宇部市長の口車に乗って動かされたものと思われる。本当の犠牲者は経済人であり、手柄を独り占めしたのは政治家ではないだろうか。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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