2024年03月29日( 金 )

LIMEXで「素材革命」を起こせるか?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)TBM

LIMEX名刺

 「時代の架け橋になりたい(Times Bridge Management)」。(株)TBM(東京都中央区、山崎敦義代表取締役CEO)の社名にはそんな思いが込められている。同社は、石灰石(Limestone)を主原料とする新素材「LIMEX(ライメックス)」を手がけている。石灰石は、地球にほぼ無尽蔵にある資源であり、日本でも100%自給自足できる資源だといわれる。

 LIMEXは、水や木、石油由来原料に依存せず、紙やプラスチックの代替製品(名刺やメニュー表、レジ袋など)を成形できるのが特長。リサイクルによる製品のアップグレードを意味する「アップサイクル」可能な素材としても、国内外の注目を集めている。「ネクストユニコーン企業」と呼ばれる同社が目指す「素材革命」は現実となるのか。

岡澤友広・(株)TBM経営企画本部ニュービジネスデザイナー

従来のストーンペーパーを超える新素材「LIMEX」を自社開発

 TBM設立以前は、石灰石を原料とする「ストーンペーパー」を台湾から輸入し、パンフレットやノベルティなどのストーンペーパー製品を販売していたが、品質のばらつきなどの課題があった。そこで、より軽く、高品質で安価な新素材LIMEXの自社開発に乗り出した。開発時には、品質向上のための最適な表面処理、より紙に近づけるため、耐水性・耐久性を向上させる添加剤の最適な配合比率などについて、試行錯誤を繰り返した。2014年にはLIMEXに関する基本特許を取得。LIMEXに関する特許は現在、世界40カ国以上で出願し、30カ国以上で登録済だ。15年、宮城県白石市にプラント工場(敷地面積1万510m2、生産量年6千t)が完成。製造がスタートした。開発は現在も続いている。たとえば、石灰石の配合比率を落とさずに成型のしやすさを確保する、コピー用紙並みの薄さを実現することなどを追究している。

 通常の紙を1tつくるには、約20本の木、約85tの水が必要になる。LIMEXシート1tをつくる場合には、石灰石0.6~0.8tとポリオレフィン樹脂0.2~0.4tで済む。大量の水や木を使うこと自体、環境に負荷をかける。排水処理にはエネルギーやコストもかかる。同社によれば、世界には、水資源が乏しく、自国で紙を製造できない国もあるらしい。水資源に恵まれた日本では気づきにくいが、水を使わないで紙の代わりとなる製品をつくることは、それだけ画期的なことなのだ。

20年秋に新工場が稼働

 LIMEXは15年、ミラノ万博のポスターで採用されたのを皮切りに、16年にLIMEX名刺の本格販売を開始。「1箱で10Lの水資源を守れる」をキャッチコピーに、環境に優しく、耐久性、耐水性に優れることが評価され、これまでに3,400社以上で採用されるヒット商品になっている。LIMEX名刺はネットから注文できる。LIMEX STORE。飲食店向けのメニュー表の販売も好調だ。19年3月には、牛丼チェーンの(株)吉野家がグランドメニューに採用している。LIMEXを建装材として活用する共同開発も進んでいる。好調な販売を受け、同社は多賀城市に2つ目のプラント工場(敷地面積2万7500m2、生産量2.5万t)の建設に着手。20年秋に稼働予定だ。

(つづく)
【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATION>
所在地:東京都中央区銀座2−7−17
設立:2011年8月30日
資本金:107億4480万,円
TEL:03-3538-6777
URL:https://tb-m.com/

<プロフィール>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)

立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com

(後)

関連記事