不動産市場の主要プレイヤーとなったアパグループ のホテル開発戦略(後)
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アパグループ 代表 元谷 外志雄 氏
ドミナント戦略背景に創業来、リストラゼロ
――アパホテルの提唱する「新都心型ホテル」とは、どのようなホテルを指すのでしょうか。
元谷 アパホテルには、ドアボーイもおりませんし、過剰なサービスもいたしません。ゲストには誇りをもって泊まっていただき、スタッフは誇りをもってお迎えするという対等な関係にあります。また、「アパホテルは狭い」とよく言われますが、狭いのではなく、コンパクトなのです。コンパクトだから、どこに何があるかわかりやすい。それは泊まりやすさにもつながります。幅140cmのベッド、50型以上の大画面テレビ、ベッドに寝ながら一度に操作できるよう、エアコンや照明スイッチなどの機能を枕元にまとめています。身の回りにすべてそろっていると、ビジネスマンも使いやすく楽なのです。
コンパクトであることにより、当然1室あたりのエネルギー消費量が小さくなり、収益率は高くなります。駅から徒歩2.5分以内、使いやすく配置された機器類、適度なホスピタリティ、環境への配慮、高い収益性を総称して「新都心型ホテル」と呼んでいます。新都心型ホテルとして都内を中心に多くのホテルを集約開発することで、18年11月期(連結)は、売上高1,339億円(前期比15.4%増)、経常利益362億円(前期比3.4%増)を計上。過去最高益を更新することができました。
――ホテルスタッフの教育は、どのようにされていますか。
元谷 そこでドミナント戦略が生きてくるのです。東京23区でもホテルが集中しているのは都心7区であり、そのエリアごとにベテラン支配人を配置しています。トラブルがあったら、すぐに駆けつけ、対応できるような体制にしています。これによって、若手を支配人に抜擢することが可能になります。ホテルが集中しているから、問題が起きたとしてもベテラン支配人がすぐに駆けつけて、サポートすることができるのです。
成果を上げれば、部屋数が多いホテルの支配人に異動し、それを繰り返すことで人材の育成にもつながります。失敗しても小さめのホテルからやり直しさせます。昇進昇格に意欲をもたせる人事です。弊社グループでは創業来、1人もリストラしていません。
福岡で8棟を計画、うち6棟は直営
――そしていよいよ福岡進出ですね。
元谷 「SUMMIT 5-Ⅱ(第二次頂上戦略)」も残すところ1年です。これまで福岡に新築での直営ホテルはありませんでしたが、新築するのであれば駅近くが良いと考えていました。(株)ティーケーピーとFC契約を締結し、「アパホテル〈博多東比恵駅前〉(仮称)」「アパホテル〈福岡天神西〉(仮称)」の2棟を建設しています。それぞれ20年2月と4月の開業に向けて計画しているほか、6棟の直営ホテルも建設します。
日本はこれから、観光大国への道を歩んでいきます。アジアの人口は今後も増加し、所得水準も高くなっていくでしょう。これまで韓国や台湾、香港、シンガポールなどからの観光客がメインでしたが、これにタイやインドネシア、インド、マレーシア、フィリピンも加わっていくでしょう。
そしてアジアの玄関口はどこかといえば、やはりそれは福岡ではないでしょうか。東京での大展開は、国内需要、とくにビジネスマンの出張客の確保を重点に置いていましたが、一気に福岡で直営6ホテルを開発する大きな狙いは、インバウンド需要にあります。
仕入れの秘訣は「高値買い」
――アパホテル独特の土地の仕入れ手法には、皆さま関心があると思うのですが・・・。
元谷 用地取得の秘訣は、簡単にいうと高値買いです。福岡の例でも、なぜ駅近に6つのホテルがほぼ同時に購入できたかというと、高値で買うからです。私は自分で土地を確認し、200億円までであれば私の判断で即決。土地費用に建設費用を含めたプロジェクト融資として、金融機関から調達するという手法でホテルを開発しています。
低金利の時代ですから、お金は借りられて当たり前と思うかもしれませんが、金融機関は少しでもリスクがあれば融資しません。超低金利を享受できるのは健全経営している企業だけです。つまり融資引き締めと超低金利が同居している時代です。我々は、幸いなことに自己資金があり、金融機関から低金利で調達できる経営環境にもあります。
これが高値買いの武器です。アパホテルの資産評価について、金融機関は正当に評価しているのでしょう。かつて、「持たざる経営」が流行りましたが、私は「持つ経営」を積極的に進めてきました。所有して、償却して、含み資産を増やす経営がアパグループの経営の根幹です。すでに借入金の返済が完了したホテルも数十棟あります。最終的にはそのホテルを担保に借りることができます。「持つ経営」とは、建物、オペレーション、ブランド、すべて自前でやることにより、利益を確保することです。土地転がしをしない、リゾート開発をしない、海外投資をしない、この3つを守ったうえで拡大できるところは拡大し、撤退するときは撤退するという自然体の経営を、これからも継続していきます。
(了)
【長井 雄一朗】<Company Information>
アパグループ
代 表:元谷外志雄
東京本社:東京都港区赤坂3-2-3 アパグループ赤坂見附本社ビル
売上高:(18/11連結)1,339億円
TEL:03-5570-2111
URL:https://www.apa.co.jp関連記事
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