2024年04月24日( 水 )

参議院議員・経済評論家 藤巻健史氏ブログ~米中貿易戦争が終わらないワケとは?

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 NetIB-Newsでは、参議院議員で経済評論家の藤巻健史氏のメルマガを掲載している。今回は、白川方明・前日銀総裁についてや米中貿易戦争が終わらない事情など3編。

(1)朝日新聞be「藤巻兄弟の思い出」

 以前、週刊朝日「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」の編集者だった江畑さんから「朝日新聞土曜日版beに転勤になった」とのご挨拶をいただいた。

 beは幸夫と「藤巻兄弟」とか「フジマキに聞け」などとタイトルを変えながらも8年間(幸夫は途中1年間休み)共著した懐かしい媒体です。藤巻兄弟を印象付けてくれた媒体でもあります。

 2012年まで13年間、一橋大で授業を受け持っていましたが、毎年、期末試験前にアンケートを取っていました。

 出席していれば加点してあげるためでもあったのです。

 中に「先生はあの『藤巻兄弟』を書いてる藤巻さんなんですか?大好きな連載で毎週読んでいます。でも最近まで、藤巻先生があの藤巻さんだとは気がつきませんでした。もっと早く気がついていたら、授業に出たのに」という話があり笑ってしまいました。

 幸夫が1年休養すると決まったとき、編集部から「『メンターに聞け』というタイトルで継続したいので、幸夫の代わりのペアーの方をご提案ください。まだ世に出ていない女性が良いです」と言われました。

 そこで私は**さんを、紹介したのですが「すでに有名ですので」と却下され、女性記者の推薦で勝間和代さんとなりました。確かに彼女は当時まったくの無名でした。その意味ではbeは勝間さんの売り出し元でもあるのです。

 「メンターに聞け」の連載が1年続いた後、幸夫が復帰しました。当時の編集の方から「勝間さんをここで切るのはしのびないので、『藤巻兄弟』の連載を紙面の上で『勝間さんの連載』を下にして継続させます」とご挨拶がありました。そして1年後。「藤巻さん、申し訳ないのですが、勝間さんの連載すごい人気なので、コラムの連載場所、上と下を変えてもいいですか?」

 勝間さんの文章が紙面の上、私たちの連載が下になったのです。「あちゃー、ひさしを貸して母屋を取られた」と思いました(笑い)。

 8年間の連載のうち、編集者の方は6~7人変わりました。私は、すべて文章を自分で書いて原稿を渡していたのですが、幸夫は30分くらい話して、それを基に編集者のほうが原稿を起こしていました。幸夫が福助の社長に就任した直後、私の友人からメールが来ました。

 「ポジションが人をつくるとは本当だよな~。幸夫さんは社長になったとたん、文章が上品になった」

 違うんです。あの時は、偶然、編集者が変わっただけなんです。なにはともあれ、beには楽しい思い出がたくさんありました。

(2)白川方明・前日銀総裁が危惧した事態

 週刊朝日の連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」の265回は以下の内容です。「かつてのテニス仲間との忘年会で、サカモトさんが一言。『フジマキ君、太ったね~、貫禄が出て政治家としてはいいけれど、テニス仲間としては許容しがたい体形だな』

★       ★       ★

 私のメタボも問題だが、日本銀行のバランスシートが膨らむメタボはもっと深刻だ。中央銀行として許容しがたいほどで、今年は出口が大問題になると思う。

(中略)

 金利の引き上げ時に、日銀は損を垂れ流す可能性が高い。岩田規久男・前副総裁は2017年の参議院財政金融委員会での私の質問に、「おっしゃるように短期的には逆鞘が生じるということがあるかもしれませんけれども」と、渋々認められた。ただ、その状態は長く続かないともおっしゃった。はたしてそうか?

 日銀の純利益は、保有資産からの受取利子や配当金などから、負債に関する費用を引いたもの。17年度は1兆2,287億円で、米連邦準備制度理事会(FRB)の807億ドル(約9兆円、17年暦年)より大幅に低い。資産の大半を占める債券利回りを比べると、FRBが平均2.6%と高いのに比べ、日銀は0・279%に過ぎない。

 以前の中央銀行は、負債の大部分が発行銀行券だった。支払金利はほぼゼロで、保有資産からの収益がそのまま純利益になった(通貨発行益という)。

 ところが、異次元緩和を始め、中央銀行の最大の負債は民間銀行の預ける日銀当座預金(当預)。日銀は国債を爆買いしているが、その代金を現金で払うわけではなく、各金融機関が日銀にもつ当預に払い込む方法をとる。18年9月末現在、発行銀行券105兆円に対し、日銀当預か395兆円もある。

異次元緩和に踏み切った以上、景気回復期に短期金利を上げるのに以前の手法は通用しない。当預の付利金利を上げて達成するしかないといわれる。FRBもその方法で利上げしている。

 消費者物価指数が日銀目標の2%を安定的に達成したら、短期金利は最低2%になるだろう。引き上げないと景気は過熱し、インフレが加速する。日銀当預395兆円の2%は約8兆円で、これが支払金利。資産サイドは固定金利の長期債が大部分で、収入は今の1兆2千億円から大きく増えない。

 収入1兆2千億円で支払い8兆円のため、明らかに損の垂れ流しが始まる。景気がよくなれば損はさらに増える。日銀の準備金と引当金は計8・4兆円だから債務超過の恐れもある。

 そんな中央銀行と発行通貨の円を、国民が信用するだろうか? 日本国民が信認しても外国人は受け取るか? 白川前総裁が危惧した事態とはこのことだろう。」

(3)「米中貿易戦争、簡単に終わらないワケ」

 以下、週刊朝日の連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」の265回です。「先日、古巣の三井信託銀行(当時)千葉支店のOB・OG旅行でナガシマ先輩にこう言われた。『政治家はスポークスマンに過ぎない。周りの人が色々考えてそれを公の場でいうだけ。それと比べてフジマキは偉いよな、いつも自分で考えたオリジナル意見をいうからね』。横で聞いていたオオニシ先輩が一言。『人徳がなくて、支えてくれる人がいないだけじゃないの?』

★   ★    ★    

(略)

 中国の名目GDPは40年前と比べて220倍になった。1978年からの改革開放政策で「計画経済を放棄し市場経済にシフトしたから」と考えられる。

 一方で、日本は40年間で2.5倍強で、成長率は先進国でビリ。「安倍政権発足後、景気は良くなった」という次元の話ではない。優秀な国民なのに、経済成長がビリとは根本的原因があるはずだ。

 原因は、中国が計画経済から市場経済に移行したのに、日本は逆に計画経済・社会主義的経済を強化したからだと思う。大きな政府、規制過多、結果平等志向の税制、社会主義的株主資本主義、格差是正至上主義、競争回避、政府の春闘への介入……。こうした点によく表れている。市場原理が働かず、円が国力より高すぎたのも一因だろう。

 中国は日本の失敗に学んだ。市場経済を推し進めたうえ、人民元を低く抑えるペッグ制を続けて世界の工場として君臨。1人民元は80年に160円だったが今やほぼ16円。Iドル=100円かIドル千円になったようなものだ。これで競争に勝ち、世界の工場になった。

 現在の米中貿易戦争は、この勢いを止めなければというトランプ大統領の決意の表れではないか? であれば、関税撤廃などという枝葉末節(?)な解決策ではすまない。経済発展の原動力だったペッグ制廃止をも、米国は要求するのではないか。世界経済を牛耳るには中国が唯一の競争相手だと米国は感じている。貿易戦争で、ここまで強硬姿勢を貫く理由だと思う。

(中略)

 出る杭を抑えたいトランプ大統領の心を考えると、米中貿易戦争はそう簡単に終わらないかもしれない。」

<プロフィール>
藤巻 健史(ふじまき・たけし)

参議院議員。日本維新の会政調会長代行。元モルガン銀行(現JPモルガン・チェース)日本代表・東京支店長。元ジョージソロス氏アドバイザー。1974年に一橋大学卒業後、三井信託銀行に入社。ケロッグ経営大学院を修了し、MBA取得。モルガン銀行東京支店長、ジョージソロス氏アドバイザー、一橋大学や早稲田大学の講師、金融庁審議会専門委員などを経て、2013年7月参議院議員に。

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