2024年04月20日( 土 )

LIXILグループの経営混乱、最大の元凶創業家・潮田洋一郎氏の「趣味人経営」に喝!(前)

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 首脳人事をめぐる混乱が続いてきた住宅設備大手、LIXILグループは6月25日、東京都内で定時株主総会を開いた。前の最高経営責任者(CEO)、瀬戸欣哉氏ら株主側が提案した取締役候補は8人全員が選ばれ、取締役全体14人の過半数を得た。瀬戸氏は総会後の取締役会でCEOに帰り咲いた。最大の争点は、総会で退任した母体企業の1つである旧トステム創業家の潮田洋一郎会長兼CEOの“院政”の是非を問うものだった。

瀬戸氏側が過半数を確保し、CEOに復帰

 新たな経営陣の人選をめぐり、瀬戸氏側と会社側が激しく対立した。当初は海外投資家に一定の影響力をもつ米議決権行使助言会社が瀬戸氏側の候補に反対を推奨して、瀬戸氏側が劣勢とみられていた。だが、国内機関投資家の一部が支持に回ったことが過半の支持につながった。

 会社側候補への支持が広がらなかったのは、潮田洋一郎氏の影響力が残る指名委員会が選んだ会社側候補者が信用されなかったからだ。潮田氏が“院政”を敷く布陣と見なされた。

 同社が26日に開示した臨時報告書によると、取締役候補の賛成比率はこうだ。

潮田氏のMBO、シンガポール移転計画で対立

 LIXILグループの経営混乱は2018年10月、取締役会議長で旧トステム創業家出身の潮田洋一郎氏が、「プロ経営者」として招いた瀬戸欣哉氏を解任し、自ら会長兼CEOに就いたことだ。

 この決定が不透明だとして、世界最大の資産運用会社、米ブラックロックや、英投資会社マラソン・アセット・マネジメントなど海外の4機関投資家が「不可解」と異議を唱えた。

 なぜ、潮田氏は瀬戸氏を切ったのか。

 『日経ビジネス』電子版(19年1月21日付)は、「スクープLIXILがMBOを検討、日本脱出も」と報じた。潮田氏がMBO(経営陣が参加する買収)で、日本の株式市場から退出し、シンガポールに本社を移し、シンガポール取引所に新規上場を計画しているという仰天するような内容だ。

 LIXILグループは、首脳人事が不透明だと投資家が疑問視している問題で、弁護士らによる第三者委員会が調査報告書をまとめた。簡略版を自社ホームページで公表したが、全文公開しなかった。全文公開せよと批判を受け、4月9日に公表したが、瀬戸氏と潮田氏が対立するきっかけについては「略」として握り潰した。

 瀬戸氏が退任に追いやられる直接の引き金になったのは、2018年10月19日の会食の席だった。瀬戸氏はこう述べたと記載されている。

 「10月19日の会食では(略)について議論した。私は(略)と助言した。また、(略)と伝えた。(略)などと述べており、LIXILグループの経営方針(略)などについて議論を行った」

 「略」だらけのこの一文を読んで理解できる人がいるだろうか。会社側は、潮田氏の意図を何が何でも隠したがっていた。潮田氏に気を遣い忖度したわけだ。

 このくだりは、本社を東京からシンガポールに移し、経営陣による自社株式の買い取り(MBO)を計画する潮田氏に、瀬戸氏が「やめた方が良い」と反論したもの。潮田氏は、自分の計画に楯突いた瀬戸氏を解任。自らCEOに就いて、シンガポール移転、MBO計画を実行することにしたのだ。

(つづく)
【森村 和男】

(中)

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