2024年04月20日( 土 )

LIXILグループの経営混乱、最大の元凶創業家・潮田洋一郎氏の「趣味人経営」に喝!(中)

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瀬戸氏側が潮田氏追撃の狼煙を上げる

 ここから潮田洋一郎新CEOと瀬戸欣哉前CEOのバトルが火を噴いた。

 瀬戸氏を支持する英マラソン社ら英米の機関投資家と、LIXILグループ前身の1つであるINAXの創業家出身の伊奈啓一郎取締役連合は、潮田洋一郎会長兼CEOと山梨広一COO(最高執行責任者)の取締役解任を求める臨時株主総会の開催を要求した。

 瀬戸氏は4月5日、伊奈啓一郎氏と共同で、6月の株主総会の議案として、両氏を含む8人を取締役に選任するよう求める株主提案すると発表した。

 瀬戸氏は会見で、MBOやシンガポールへの本社移転計画には、「日本の事業が多いので移転はしない。MBOはあまり意味がない」とバッサリ切り捨てた。

 シンガポールに滞在し、月に1度程度しか帰国しない潮田氏の経営姿勢を問われると、「LIXILは日本のビジネスが7割。ちょっとありえない経営だという気がする」と痛烈に批判した。

現取締役を全員退任させる「院政」大作戦

 潮田氏はなかなかの策士だ。瀬戸氏側を封じ込める作戦に出た。潮田氏は4月18日の記者会見で、5月に取締役を退任し、6月の株主総会で会長兼CEOも退くと発表した。

 これで、瀬戸氏側が潮田氏らの取締役解任に向けて開催を求めていた臨時株主総会ができなくなった。さらに、株主総会で会長兼CEOも退く。瀬戸氏側が標的にしていた潮田氏が、突然、いなくなったのだ。

 潮田氏が、自ら辞任を表明したのは、「院政」大作戦の布石だった。やがて、その内容が明らかになる。

 院政を危惧するLIXILグループの執行役10人が、「潮田CEOには経営する資格はない」とする文書を、役員人事案を決める指名委員会に送るなど、潮田氏主導の経営体制を防ごうとする動きが社内でも表面化した。しかし、指名委員会が出した結論は、当時、会長兼CEO職にあった潮田氏の意を酌んだものだった。

 株主総会に会社側が提案する取締役候補10人のうち6人が6月5日、東京都内で記者会見した。社外取締役候補でコニカミノルタ前社長・松崎正年氏は「現取締役はすべて退任し、社外取締役を中心にコーポレートカバナンス(企業統治)を再構築していくことが合理的だ」と強調した。

 「現取締役すべて退任」。これがポイント。反潮田の急先鋒である瀬戸氏と伊奈氏を追放するのが狙いだ。しかも、唯一の社内取締役候補の大坪一彦執行役副社長は潮田氏の側近。大坪氏を代理人として取締役会をコントロールし、潮田氏が「院政」を敷く意図がみえみえだ。

 だが、会社側の取締役候補はドタバタで決めたようで、次期CEOは不明という前代未聞の珍事。慌てて、元リコー社長・三浦善司氏を暫定のCEOに選定した。さらに、会社側が推薦した鈴木輝夫氏(元あずさ監査法人副理事長)と鬼丸かおる氏(元最高裁判事)は、瀬戸氏側がまず推薦し、その後、本人承諾なしに追随したお粗末さ。泥縄式の取締役選定だった。

 それでも指名委員会が決めた候補者を会社提案にすることで、どこからも文句がでないようにした。株主総会では勝てる、と潮田氏は読んでいたはずだ。しかし、予想は大きく外れた。潮田氏が読み誤ったのは、自身が経営者としてまったく信用されていないことに気付いていなかったからだ。

(つづく)
【森村 和男】

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