2024年04月20日( 土 )

観光のまち太宰府を後押しする 天の恵み「令和」というチャンス(後)

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太宰府市長 楠田 大蔵 氏
太宰府市観光協会 会長 不老 安正 氏

<プロフィール>
楠田 大蔵(くすだ・だいぞう)

1975年4月、福岡県筑紫野市出身。東京大学法学部を卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)に入行するも退職し、羽田孜・元総理の秘書として政治の道に入る。2003年に第43回衆議院議員選挙に初出馬し、28歳で初当選。衆議院議員を3期務めた。18年1月に行われた太宰府市長選で当選し、市長に就任した。

<プロフィール>
不老 安正(ふろう・やすまさ)

1944年1月生まれ。(株)かさの家の代表取締役を務めるほか、(公社)福岡県物産振興会会長や太宰府市観光協会会長など数々の要職を兼任。2016年6月には、自身がホスト委員会委員長を務めた「第99回ライオンズクラブ国際大会」を福岡市に誘致し、日本の良さや「フクオカ」の名を世界に強くアピールした。さらに、1988年開催のソウルオリンピックに出場したクレー射撃オリンピアンという一面ももつ。

住民にも心地良いまちへ

 ――とはいえ、福岡県内の各地を見ても、1,000万人もの観光客が押しかけて来るような場所は、太宰府以外にはありません。市の財政面はいかがでしょうか。

 楠田 市の一般会計予算は約244億円。財政が厳しい理由の1つには、史跡地が多いということが挙げられます。市面積全体の16%が史跡地なのですが、そこでは少なくとも固定資産税が生じません。史跡地の買取費用など維持保存費用は年間で億単位になります。

 主要な税収としては、「個人市民税」「法人市民税」「固定資産税」がありますが、太宰府市の人口、企業数は周辺地域より少ない一方で史跡地は多いため、出て行くお金のほうが多くなってしまっているのです。

 太宰府市を訪れる人にとっても、ここに住む人にとっても、どちらにも心地良いまちにしていくことが、行政の仕事であり、使命です。「令和」への改元で大きなチャンスをいただきましたが、そのチャンスは全市民に平等に行きわたらなければなりません。誰もがチャレンジできるよう、規制の緩和などの誘導策を市として行っていくことが重要だと思っています。今回の予算編成でも、新規事業の予算を一定規模確保しました。このチャンスをどう生かしていくかが大切です。

 不老 太宰府天満宮という存在によって、我々参道の店舗は恩恵を受けています。九国博もそうです。ですから、まちを発展させていくためには、店舗同士で協力体制をとり、市に税金を納めていかなければならないと思います。

 太宰府市にとって、観光は貴重な財源でもあります。残念ながら市内には全国に名立たるような大企業・商工業者はなく、観光による収入こそが太宰府市を支えているともいえます。そして観光というものは、地域や自治体全体でつくっていくものです。たとえば弊社では、原材料のすべてを地元の商工業者の皆さまから仕入れながら商いを行っています。そのように、観光によって太宰府市にもたらされる利益は、商工業にも循環しているのです。観光協会と商工業者、そして行政が一体となって、観光のあり方を改めて考えていかなければなりません。

 ありがたいことに、天満宮周辺の店舗は東アジアを中心とした外国人観光客に多く訪れていただいています。太宰府天満宮の参道や沿道を合わせて約100軒の店舗が並んでいますが、彼らの存在によって各店舗の売上は伸びています。ただし、参道の店舗の約40%はテナントで、税金は本社所在地で申告されているほか、地元の店舗に比べて店舗同士の協力体制が若干弱いように感じます。テナントの大家さんとも話し合い、今後の解決策を考えていかなければならないと思います。観光客を呼び、参道をこれだけ大きく発展させたのは地元の力です。行政も石畳をつくるなど、まちの景観美化の施策を実行してくれました。必要なのは、お互いの協力体制なのです。

 ――最後に、「令和」への改元、「大太宰府構想」についての思いをお聞かせください。

 不老 「令和」への改元は、太宰府市発展の起爆剤となるでしょう。新たなまちづくりを実行しようとしているところに、天からの恵みのようなチャンスが到来しました。楠田市長には、ぜひとも強力なリーダーシップを発揮していただきたいと期待しています。

 楠田 私が市長に就任して1年が経ちましたが、その間、甲子園応援クラウドファンディングやプール授業の民間委託など、さまざまな知恵を絞ってきました。そして、改元という太宰府市にとっての大きなチャンスが舞い込んできました。このチャンスを生かすべく、市民を巻き込んだ“オール太宰府”での取り組みを進めるために、行政トップとして積極的に動いていきます。また近隣エリアも含めた「大太宰府」としての発展を目指し、ここ太宰府市を、九州・福岡だけでなく、日本、そして世界に誇れるようなまちにしていきたいと思っています。

(了)
【内山 義之】

千載一遇のチャンスにも前向きな姿勢見られず~筑紫野市観光協会会長

 今年4月1日、新年号が「令和」と発表されて以降、沸きに沸いている太宰府市をはじめとした旧筑紫郡。まちづくりvol.15では上記のとおり「太宰府市長・楠田大蔵氏と太宰府市観光協会会長・不老安正氏の特別対談」のほか、「福岡県議会議員・原竹岩海氏インタビュー」など太宰府特集を組んだ。そのなかでは、大太宰府構想や太宰府市と筑紫野市の先を見越した広域的なプロジェクト構想について語ってもらった。また、「第40代太宰府天満宮宮司・西高辻信宏氏のインタビュー」も掲載するなど、それぞれが積極的な情報発信を行っている。

 太宰府を訪れる年間約1,000万人の観光客。滞在時間が短いという問題に対し、正面から取り組み、いかに長時間、また翌日まで滞在させることができるか、二日市温泉へいかに観光客を流入させるかなどの施策にまち全体として取り組もうという意気込みが旧筑紫郡の方々からは感じられる。

 弊社でも、その意気込みを旧筑紫郡の住民をはじめ、多くの方々に知っていただき、新年号「令和」への改元の機運を高めたいと情報発信を行っているところだ。

 しかし、一方で、筑紫野市観光協会の会長は取材に応じなかった。観光協会会長の務めは、いかなる手段をもってでも観光客を呼び込むことだと考える。どのようなまちで、どのような名所があるのか、どのような特産品があるのかなどを周知し、行ってみたいと思わせ、実際に訪れた観光客を十分に「おもてなし」をすることだろう。

 現在の観光協会の会長には、その気概が感じられない。「改元」景気という千載一遇のチャンスをつかむ気はないのだろうか。残念に思う。

【内山 義之】

(前)

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