2024年03月29日( 金 )

変わらないために、変わり続ける―― 令和の時代に太宰府天満宮がはたす役割とは(前)

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第40代 太宰府天満宮 宮司
西高辻  信宏  氏

 令和の御代を迎え、日本中が歓迎ムードに沸くなか、とくに盛り上がりを見せているのが太宰府だ。太宰府は、新元号の典拠となった万葉集巻五「梅花の歌〜三十二首〜序文」で示された「梅花の宴」の舞台であり、今多くの観光客が関心をもって現地に足を運んでいる。その太宰府のまちづくりに早くから尽力し、まちの象徴として幾多の役割をはたしてきたのが太宰府天満宮だ。今回、第40代太宰府天満宮宮司・西高辻信宏氏に、新時代に求められる太宰府天満宮の在り方について話をうかがった。

(聞き手:弊社取締役・児玉 崇)

<プロフィール>
西高辻 信宏(にしたかつじ・のぶひろ)

 太宰府天満宮の御祭神・菅原道真公の末裔。1980年、太宰府市に生まれる。東京大学文学部卒。國學院大學で修士号(神道学)ならびに神職資格を取得。太宰府天満宮に奉職後、ハーバード大学ライシャワー研究所客員研究員として2年間留学。神職としての祭祀奉仕に加え、積極的に美術展企画やまちづくりに携わる。2019年4月1日付で太宰府天満宮第40代宮司を拝命。

御本殿

宮司就任と新元号発表の縁

 ――太宰府天満宮宮司就任、おめでとうございます。まずは4月1日に就任されてからこれまでを振り返られての、率直な感想をお聞かせください。

 西高辻 私が宮司を拝命しました4月1日は、就任奉告祭を執り行いました。大変多くの皆さまよりご祝辞を賜り、感謝の思いのもと、宮司を務めさせていただいております。また、同じ日には新元号の発表があり、新たな御代を迎えるにあたって身が引き締まるとともに、私自身も宮司として新たな一歩を踏み出せたことを、大変喜ばしく思っております。

 ――宮司になられる前と後で、一番変わったと感じられるのは、どのようなことでしょうか。

 西高辻 これまでも多くの祭典奉仕に携わってまいりましたが、先代である父から宮司を受け継いだことで、自らが斎主という最高責任者として奉仕するようになりました。祭典や神事を重ねるたびに、その職責の重さを実感しております。

 ――先ほどお話しされた通り、宮司に就任された日に新元号が発表されました。改めてどのように感じられましたか。

 西高辻 新元号「令和」が太宰府にご縁があることに、大変な驚きを受けたとともに、素直にありがたいことだと感じました。地元の方々にとっても、誇らしいことだと思います。

 今後、太宰府天満宮に期待される新たな役割もあるかと存じます。嬉しさと同時に大きな責任も感じており、ますます精進していく所存でございます。

連綿と続く歴史のなかで

 ――太宰府のまちづくりに関して、考えをお聞かせください。

 西高辻 たとえば明治前期には、太宰府に国鉄が通る計画もあったようです。しかし、参道やその周辺に宿泊施設が多数あったため、国鉄の参入により太宰府への観光が滞在型から日帰りが主流のものに変化するのではないかといった懸念があり、その計画は立ち消えとなりました。その後、日本では鉄道の需要が高まり、太宰府でもその必要性が見直され、1902(明治35)年に西鉄の前身である馬車鉄道により、太宰府と二日市の間が結ばれました。

 このように歴史を紐解いていくと、太宰府と交通インフラの関係性の深さに気づかされます。先々代の宮司である祖父は、戦後にハーバード大学へ留学し、日本に戻ってきた際に、この国でもモータリゼーション(自家用自動車の普及)が進んでいくと考え、当宮より約1km離れた場所に大規模駐車場を整備しました。まだ自動車が普及していない時代の話です。しかし、この決断により、当宮と駐車場を繋ぐ参道は賑わいをみせ、神社とまちが共存し、双方が豊かになる環境を生み出すことができたのです。

案内所

(つづく)
【代 源太朗】

(後)

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