2024年04月25日( 木 )

財政金融のプロとして政治責任をはたす決意!(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日本の財政は世界最悪である。2018年の対GDP(国内総生産)比では、ついに236%になった。一方『世界の統計2017』(総務省統計)の20年間の成長ランキング(1995~2015年までの20年間の名目GDP成長率)でも、日本は世界73カ国で断トツの最下位である。しかし、国会で「アベノミクス」の政策失敗を問う議員はほとんどいない。国の借金がどんどん積み上がっていくのに、この点に関する議論もまったく行われない。それはなぜか。1990年代から一貫して日本の財政危機に警鐘を鳴らし、7月21日の選挙に再び出馬を決めた、藤巻健史参議院議員(参議院財政金融委員会理事)に聞いた。

参議院議員 藤巻 健史 氏

お金を借りることができなければ、すぐ国の財政が破綻

 ―――本日は財政金融のプロとして、日本の財政事情について易しく教えていただきたいと思います。

 藤巻健史氏(以下、藤巻) 今の日本財政は世界で最悪です。2018年の対GDP(国内総生産)比で見ると、日本は236%で、財政危機がしばしば話題になる、ギリシャ(181.1%)やイタリア(132.2%)より、はるかに悪いのです。なぜ、対GDP比で見るかといえば、「船はどの程度の浸水で沈没するか」という考え方に基づいています。たとえば、同じ量の浸水でも、漁船は沈没しても、タンカーは沈没しないからです。経済規模が大きくなれば税金も増えます。

 つまり、借金と税収を比べて、比率が大きいということは、税金では返せない借金が積み上がってしまったことを意味します。この数字を見て「格差論」で有名な、フランスの経済学者のトマ・ピケティは著書のなかで「われわれは日本の政府債務のGDP比や絶対額を毎日のように目にして驚いているのだが、これらは日本人にとって何の意味も持たないのか、それとも数字が発表されるたびに、みな大急ぎで目を逸らしてしまうのだろうか」と語っています。

 それは、フランス、イタリア、ギリシアなどのEU諸国は、紙幣の印刷は欧州中央銀行(ECB)で一括して行われ、自国では印刷することができないからです。そのため、財政危機の際にはIMFや世界銀行などから、お金を借りることができなければ、国の財政がすぐ破綻してしまいます。

借金をして何とかなるならば無税国家が成立してしまう

 一方、日本の中央銀行である日本銀行(以下、日銀)は、自分で紙幣を印刷することができます。今、日銀は国債を引き受けて、紙幣を刷りまくっているのが現状です。厳密にいうと、日銀当座預金(日本銀行が取引先の民間銀行などの金融機関などから受け入れている当座預金のこと)残高が増えています。いくらでも紙幣を刷ることができるので、国の資金繰りの倒産はありません。しかし、誰が考えてもわかるように、「お金が足りなければ刷ればいい」ということが長く続くわけがありません。なぜならば、借金をして何とかなるならば、「無税国家」が成立してしまうからです。借りた借金は誰かが、いつか必ず返さなければなりません。

このままでいくと、日銀の倒産も決して絵空事ではない

 現在のところ日本に財政破綻は起きていません。日本独特の、「異次元緩和」という“飛ばし”が行われているからです。つまり、危機の先送りです。しかし、バブル崩壊後、「山一證券」は飛ばしが原因で1997年に廃業(倒産)しました。

 今、紙幣を刷りまくった日銀そのものが危機に陥っています。日銀のGDP比は102%になっており、世界の中央銀行、米国(FRB)は約20%、欧州中央銀行(ECB)は約30%ですので、いかに日銀がメタボなのかおわかりいただけるかと思います。日銀の負債というのは、ほとんどが発行銀行券と日銀当座預金です。日銀は経済規模に対して、尋常でないほどお金をばら撒いてしまったことになります。私はこのままでいくと、日銀を倒産させ新しい中央銀行をつくることも決して絵空事ではないと思っています。

ハイパーインフレ、預金封鎖、新券の発行を2回経験した

 日銀は「ジリ貧」を回避しようとして、「ドカ貧」の道、つまり、「ルビコン川」をわたってしまいました。これは経済政策の失敗、いわば人災です。この先には「三途の川」(財政破綻、ハイパーインフレ)しかありません。現時点でいえば、口に出さないまでも、政治家、経済人、有識者の多くの共通認識になっています。だからと言って、率先して自ら「異次元緩和政策は止めろ!」といえる政治家はいません。その直後、国民が悲惨になることが明らかだからです。日本は、1927年と46年の2回、ハイパーインフレ、預金封鎖、新券の発行(旧券は紙屑)、すなわち事実上の国民の財産の没収を経験しています。

 ここで、真実を知ってショックを受けている読者の皆さまに申し上げたいのは、これは日本政府と日銀がおかしくなるだけであって、「日本が潰れることを意味するものではない」ということです。資本主義・市場原理は偉大なもので、どんなに大きなショックがあっても、2度と誤った経済政策をとらなければ、円安になって、経済は回復します。しかし、少し歳月(おそらく4年程度)が必要になります。大本営発表を最後まで信じた挙句、再起不能の事態に陥るのを避けるために、穏やかな防衛策をとっていただくことを私はお薦めしています。日本政府がまったく頼りにならない以上、それが財政金融のプロを自認する政治家としての私の責任と思っているからです。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
藤巻 健史氏(ふじまき・たけし)

参議院議員(日本維新の会)・参議院財政金融委員会 理事・経済評論家
 1950年東京生まれ。一橋大学商学部卒業後、三井信託銀行に入行。80年に行費留学してMBAを取得(米ノースウェスタン大学大学院・ケロッグスクール)。85年モルガン銀行入行、東京支店長を経て2000年に退行後、フジマキ・ジャパンを設立。世界的投資家ジョージ・ソロス氏のアドバイザーなどを務める。2013年の参議院選挙で当選、現在に至る。1999年から2011まで一橋大学経済学部で、02年から08年まで早稲田大学大学院商学研究科で非常勤講師として毎年秋学期に週1回半年間の講座を受け持つ。日本金融学会所属。

(後)

関連記事