2024年03月29日( 金 )

相続法改正のポイント(2)遺留分制度の改正

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 平成30年7月に民法の相続法分野が大きく改正され、遺留分制度も改正されました。この制度の施行日は令和元年7月1日で、この日以後に開始された相続について適用されます。

 「遺留分」とは、配偶者、子などの直系卑属および親などの直系尊属に法律上認められた、最低限、遺産を取得することができる財産割合のことです。遺留分は、被相続人が、複数いる相続人のなかの1人だけにすべての遺産を相続させるような遺言を残していた場合などにとくに問題になります。この場合、ほかの相続人は、期待していた相続分を取得できなくなってしまいます。そこで、ほかの相続人は、「遺留分減殺請求」をすべての遺産を相続することになった相続人に対して行い、「遺留分」を取り戻すことができます。「減殺」は、「げんさい」と読みます。

 これまでは、遺留分減殺請求権が行使されると、すべての遺産について、侵害された遺留分の割合に応じて、権利が移転していました。ですので、土地・建物や株式については、遺留分減殺請求権を行使した者と行使された者との共有状態が生じていました。

 共有状態になると、不動産の処分は共有者全員の合意によらなければならなくなるなど、財産管理が著しく困難になります。しかも、相続人間で遺留分減殺請求権が行使されるような人間関係であれば、いくら親族といえども、関係性は極めて悪化していることも多いです。このようなことから、遺留分減殺請求権が行使された後の財産管理は相当困難になりました。

 また、中小企業の自社株式なども共有状態になり、これが円滑な事業承継を妨げる原因になっているという指摘もされていました。

 そこで、今回の改正で、遺留分侵害額について権利を行使することにより、遺留分を侵害された額に見合うだけの金銭を請求することができる権利が生じることとされ、不動産や自社株式が共有化されることを回避できることになりました。

 従来も、遺留分減殺請求権の行使後には、話し合いにより金銭での解決が図られることが多かったのですが、今回の改正で、そのことが法律で定められることになり、遺留分侵害による権利行使後の関係解消が金銭のやり取りにより図られ、複雑な共有関係が生じないこととされました。これにより事業承継の障がいの1つである不動産の共有による問題を回避しやすくなりました。

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<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)

弁護士・税理士/岡本綜合法律事務所 代表
 1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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