2024年04月23日( 火 )

相続法改正のポイント(3)遺産分割前の仮払い制度の創設

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 民法の相続法分野の改正項目の1つに、遺産分割前の預金の仮払い制度の創設があります。この制度の施行日は、2019年7月1日です。なお、仮に相続の開始が施行日より前であっても、施行日以後は、遺産分割前の仮払い制度により預金の払戻しを受けることができます。

 以下、詳しくご説明していきます。

 平成28年12月19日、遺産分割に関する大変重要な最高裁の決定が出ました。この最高裁決定までは、預貯金の払戻しを受ける権利は「可分債権」という分割可能なものであり、遺産分割を経ることなく相続開始と同時に各相続人の相続分に応じて当然に分割されるとされていました。しかし、前記最高裁決定により、(1)預貯金の払戻しを受ける権利は不可分債権であるため、(2)相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、(3)共同相続人による単独での払戻しができない、つまり遺産分割協議が成立するなど相続人全員が同意しないと払戻が受けられないこととされました。

 しかし、現実には、遺産分割前であっても生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの資金需要がある場合は多いため、遺産分割が終了するまでの間、被相続人の預金の払戻しができないというのはとても不便です。

 そこで、遺産分割前の仮払い制度が創設され、相続された金融機関への預貯金債権について、生活費や葬儀費用の支払などの資金需要に対応できるように、遺産分割前でも仮払いが受けられるようになりました。

 この払戻しは、一定額までは、家庭裁判所の判断を経ることなく受けることができます。具体的な金額は、相続開始時の預貯金債権の額を3分の1し、その額にさらに払戻しを行う相続人の法定相続分を掛けて算出した額(ただし、金融機関ごとに150万円を限度とします)が、家庭裁判所の判断を経ることなく、相続人単独で払戻しをすることができる額となります。

 預金600万円の口座について、子2人が相続人である場合、単独で100万円の払戻しを受けることが可能ということになります。

  600万円×1/3×1/2=100万円

 これ以上の額の払戻しが必要となる場合には、家庭裁判所の仮分割の仮処分を経て、払戻しが行われることとなります。従前、この仮分割仮処分には厳格な要件が課されていましたが、今回の改正により、預貯金債権の仮分割に限り、一定の要件の下でこの要件を緩和され、柔軟な解決が図られるような工夫もされています。

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<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)

弁護士・税理士/岡本綜合法律事務所 代表
 1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建設工事紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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