2024年03月29日( 金 )

相続法改正のポイント(4)配偶者居住権の創設

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 民法の相続法分野の改正項目の1つに、配偶者居住権の創設があります。この制度の施行日は、令和2年4月1日で、この日以後に開始された相続について適用されます。

 新しく創設された「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人の所有建物について、終身または一定期間、配偶者にその使用または収益を認める権利です。これにより、遺産分割における選択肢の1つとして、ほかの相続人が不動産の所有権を取得したうえで、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるようになります。

 具体例を用いてご説明します。

 相続人が妻および子、遺産が自宅(2,000万円)および預貯金(3,000万円)のみで、妻は自宅に引き続き居住したいという希望をもっているというケースにおいて、妻と子の相続分は、それぞれ半分(2,500万円)ずつということになります。従来であれば、遺産分割において、引き続き自宅に居住したいという妻に自宅(2,000万円)と預貯金(500万円)を取得させ、残りの預貯金(2,500万円)を子に取得させるという遺産分割の方法が考えられます。

 しかし、これでは、妻にとっては、居住建物は確保できるものの、ほかの財産、このケースですと受け取れる預貯金が減ってしまい、将来の生活に不安が残ることになります。

 そこで、今後は、自宅の所有権自体を妻に取得させるのではなく、引き続き自宅に居住できる権利である「配偶者居住権」を取得させることで、配偶者は、自宅での居住を継続しながら、自宅の所有権の価値から配偶者居住権の価値を差し引いた分だけ、預貯金などそのほかの財産も取得できるようになります。

 前記の例で自宅(2,000万円)についての配偶者居住権の評価が1,000万円、配偶者居住権の負担付きの所有権の評価が1,000万円と想定しますと、妻は自宅の配偶者居住権(1,000万円)と預貯金(1,500万円)を取得することができ、今後の生活費に充てる資金を確保できることになります。

 なお、この「配偶者居住権」の価値は、遺産分割においてとくに争いのないケースであれば、建物の耐用年数、築年数、法定利率などを考慮して配偶者居住権の負担が消滅した時点の建物敷地の価値を算定した上、これを現在価値に引き直して(法定利率で割り戻して)算定することとされています。

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<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)

弁護士・税理士/岡本綜合法律事務所 代表
 1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建設工事紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

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