2024年03月29日( 金 )

造園工事業者の知識と技で神域を形成する“天神の森”を守る

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(株)別府梢風園

衰弱したクスノキの復活へ

踏圧防止のために根元周辺に板敷きを施工したクスノキ養生工事

 太宰府天満宮の境内には50数本にのぼるクスノキの大木があり、そのうちとくに巨大な2本が国の天然記念物に、残りが県の天然記念物に指定されている。これらクスノキを中心とした叢林は“天神の森”と呼ばれ、天満宮の神域を形成するうえで、なくてはならないものだ。

 ところが、平成に入ってからクスノキの衰弱傾向が顕著となり、1994年5月にはそのうちの1本が枯死伐採されてしまう事態に。周辺のクスノキでも衰弱傾向が顕在化し始めたため、太宰府天満宮では九州大学などと共に「樹木養生会議」を組織した。そのメンバーに造園業者として名を連ねたのが、天満宮関連の庭園施工などを多数手がけていることで、前宮司の西高辻信良氏からの信頼も厚い、福岡市東区の(株)別府梢風園だった。

 同社は九大の矢幡久教授らとともに、枯死の原因究明とこれ以上の被害拡大防止のために調査を実施。その結果、踏圧によるクスノキの根元付近の土壌の硬化や、土壌の異常な酸性化が進行していることが判明した。そこで同社は、養生を目的とした土壌改良や外科治療(腐朽部の除去・殺菌、防腐処理等)を行うとともに、根元の保護を目的とした板敷き施工や木柵設置などを実施。その後、そうした養生処理が功を奏し、境内のクスノキの樹勢は見事に回復に至った。

建物や杭の位置に細心の注意を払って施工された「太宰府天満宮 誠心館」

 同社は他にも、儀式殿と斎館からなる「太宰府天満宮 誠心館」(2001年竣工)の建設の際にも、クスノキの樹木保護を大前提とした施工監修などを実施。地下に潜む根を傷つけないように建物や杭の位置に細心の注意を払うほか、建物全体を杭上に浮かせて地表を塞がないよう配慮するなど、クスノキの生育を阻害する要因を可能な限り排除している。

 「天満宮の神域は建物だけでなく、周りの樹木などの自然環境も含めてのものです。これからも樹木保護や庭園づくりなどを通じて、多くの参拝者に愛される、歴史と伝統ある天満宮を守っていくお手伝いをしていきたいと思います」と、同社の別府壽信社長は話す。

 現在も、訪れる参拝客らを鮮やかな緑で迎えてくれる、太宰府天満宮の“天神の森”。その豊かな葉叢を陰で支えているのは、宮司などの関係者らの熱い思いと、同社の知識・技なのである。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:別府 壽信
所在地:福岡市東区青葉1-6-53

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