2024年04月19日( 金 )

【ハウステンボスのIR構想】地方では採算が合わない!

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 HTB(ハウステンボス)の集客力が落ちてきている。日韓両国の友好関係に黄色信号がともっている現状と少子化、地方の衰退も相まって、今後も国内外からのお客さんが増えるとは思えない。長崎県と佐世保市行政が中心となって積極的に誘致を促進している「HTB IR Project構想」に先日、4,000億円を投資すると表明した外国企業は、本当にこの環境を理解しているのか?筆者は大いに疑問に思っている。

 読者の皆さまもご承知の通り、HTBはバブル終焉期の1992年に「歴史上の人物」神近義邦氏(元・西海町役場)が、オランダ村の延長事業として、およそ3,000億円を投じて開業した約150haという日本一の敷地面積をもつ壮大な施設である。

 しかし、残念ながらバブルが弾け、当時の経済環境などの影響もあって、開業して8年目の2000年に1回目の業績不振により、投下金額の大半が消える。神近氏は辞任、当時の大口債権者である日本興業銀行に管理運営が移ったのである。

 さらに03年から04年にかけて会社更生法の適用を申請、更生計画を提出。これを期に管理運営が野村証券の関連会社に移るが、これまたうまくいかず、紆余曲折の末、H. I. S会長・澤田氏が登場し、現在に至っている。現在の採算、収支は上々で、一般的には澤田氏を筆頭に現経営陣の評価は高い。

 しかしながら、その歴史と内情を知る人たちにとっては、当初開業時の投資額の1/200、約15億円で(一部は九州電力ほか)HTBのすべての土地施設を譲り受け、あわせて、ほとんどの公租公課を長期間免除された経緯があるので、「利益が出るのは当たり前」という評価もある。

 誰が考えても4,000億円の巨大な投資に耐えられるはずはないのである。当面は何とかなるかもしれないが、絶対的条件である基本的な後背地人口に乏しく、インフラも整っていない立地では、儲かる可能性はゼロに等しい。

 また、カジノが儲かるには客が損をしなければならないし、観光客数はその時の環境に左右されるので、どちらも当てにならないというのは常識だ。

 IR Project (カジノを含む統合型リゾート施設)は、限られた大都市、すなわち、大きな後背地人口を抱えた地域でないと絶対に採算が合わない。地方では成立しない!それは歴史が証明している。

 H.I.Sの澤田氏は、それを百も承知で、このプロジェクトに参加する意思はなく、安く譲り受けた土地を転売するのが目的だとも噂されている。

 本件に関係する首長や政治家の、いかにも地元に貢献するかのようなパフォーマンスはお粗末過ぎて、嘆かわしい限り。彼らは口だけで、誰も最終的な責任を取ろうとはしないだろう。

【青木義彦】

関連キーワード

関連記事