2024年04月19日( 金 )

活用策は「上階を開放」――大転換期で新天町は生き残れるか!?(前)

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 周囲で活発な再開発が進む天神のど真ん中にあって、これといった動きが見られない新天町商店街。福岡という都市が、商業や社会などの在り方が変わりゆくなかで、新天町は今後、どうなっていくのか――。(株)環境デザイン機構の代表を務める佐藤俊郎氏と、HIPPO Design Research Networkの代表で、商業施設などの企画・プランニングを手がける椛島清太氏の2人の専門家に、意見を聞いた。

 ――新天町の今後について、いろいろと意見をうかがいたいと思います。

 佐藤 新天町でも、一昔前から「建替えをどうするか」などの議論がいろいろとあったと思いますが、新天町の今後を考えていく場合、どの枠組みで捉えていくかによって、課題もいろいろと違ってくると思います。

 椛島 私自身は“商業”という言葉はあまり好きではありません。というのも、今は商業の大転換期です。従前の枠組みのなかで、商店街や商業施設、街のなかでの商業の在り方などを語るのは、すでにもう時代遅れといえるでしょう。

 とても厳しい言い方をするならば、私は今の新天町の在り方には、良い部分をあまり見出せません。たとえばWi-Fiの整備などはもはや当然のことですし、インバウンドにしても“棚ボタ”のようなものです。新天町の場合は、ただ単に“良い場所”で昔から商売をやっているだけで、いざ蓋を開けてみると評価に値するかどうか、甚だ疑問です。入居テナント1つとっても、結構ナショナルチェーンの店が多いですよね。それで「地元の商店街」といえるでしょうか。今のところ、言い方は悪いですが、“立地ビジネス”のようなものです。

 佐藤 商業の意味がどんどん変わりつつあるなかで、「何のために来るのか」という新天町の“わざわざ感”とは何か、という話だと思います。

 ――天神という立地があってこそ、新天町にはあれだけ人が訪れていますが、仮に新天町が別のエリアにあったとしたら、どれだけ人を集められるかは疑問です。

(株)環境デザイン機構 代表 佐藤 俊郎 氏

 佐藤 仮に人口10万人規模の都市にあったとしたら、閑古鳥が鳴いているでしょうね。1ついえるのは、新天町は現状「困っていない」ということでしょう。

 椛島 とくに何もせずとも、放っておいてもナショナルチェーンをテナントに入れていれば、人が集まってきますしね。ただし商業的な見地からいうと、もしかしたらナショナルチェーンでさえも、新天町にテナントとして入らなくなる時代が、もう近くまできているかもしれません。

 たとえば、今の若い方たちは、我々の世代以上に価値観が変わってきていて、社会とかそういうものに対してのコミットメントは、彼らのほうが真剣に考えています。これまでのように単にブランドの店で物を買うとかではなく、物のシェアとか、物をセーブするとか、エコ・フレンドリーとか、フェアトレードなど。アメリカでは、製造と販売を直接ネットでつなげることで値段を安くするような動きも流行ってきていますし、もはや商業というより、物をつくって売る仕組みがどんどんと変わってきています。そうした変化に、今の実店舗が付いていけるわけがありません。

 そういう大転換期ですから、新天町でも自らのまちづくりなどを、ゼロスタートでやっていかないといけない時期にきていると思います。また一方で、福岡市の「天神ビッグバン」にしてもこのままでは、今後5年先、10年先には、福岡市が魅力のないまちになっていくのではないかという懸念があります。

 最近、福岡の街中を歩いていても、生活感がないというか、生活のにおいがまったく感じられません。そうした生活感がない街というのは、たとえばインバウンドの方々から見ても、あまり魅力がないのではないでしょうか。

 佐藤 生活感とか生活のにおいがないというのは、簡単にいえば、やはりそこで生活している人がいないからです。あそこは1~2階が店舗で、上層部分(3階、一部は4~5階)が倉庫とか事務室、そういった使い方ですね。それを店舗だけでなく、常に24時間人の気配がするような転換があるかもしれません。人を取り戻すために「2~3階部分をどうするか」、たとえば、シェアオフィスに転換するとか、考えるなかから、新たな発想が出てくるかもしれません。

(つづく)
【坂田 憲治】

(後)

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