2024年04月25日( 木 )

アイランドシティ 開発の現状を探る(後)

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バス営業所開業、公共交通充実へ

 「まちづくりエリア」(約192ha)では、05年の「照葉のまち」への入居開始を皮切りに、官民による開発が段階的に進められてきた。現在、住宅地やタワーマンション、幼稚園、小中学校、病院、体育館、公園、スーパー、温浴施設などが立地し、新しいまちが形成されつつある。福岡市の公共施設としては、14年11月に福岡市立こども病院、18年12月には福岡市総合体育館(照葉積水ハウスアリーナ)、19年4月に照葉北小学校が開設している。

 現在、アイランドシティに乗り入れる福岡都市高速6号線の建設が進められているほか、商業施設を備えたホテルが建設予定だ。2019年5月末現在の住民は約3,200世帯・約9,600人。計画人口1万8,000人から考えると、島のまちづくりはまだまだ中間地点にある。

 エリアの一角では、西日本鉄道(株)(以下、西鉄)が分譲、賃貸マンション、シニアマンション、コミュニティセンター、スーパーマーケットなどから成る超高齢社会対応型「健康ネクストタウン計画」づくりを進めている。

 今年3月には、ネクストタウンに「アイランドシティ自動車営業所」が開業。20年夏ごろにバスロータリーが完成すれば、島内外を結ぶバス交通の新たな拠点となる。4月には、西鉄と三菱商事(株)の合弁会社ネクスト・モビリティ(株)が運営する、AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の実証運行がスタート。軌道アクセスがなく、移動が自動車頼みなのがアイランドシティの弱みだが、バス路線の強化や新たなモビリティサービスによって、交通インフラを充実させたい狙いがある。

 「健康ネクストタウン計画」とは、福岡市が策定した計画で、アイランドシティ内に高齢者向け住宅、多世代交流住宅、コミュニティセンター機能を一元的に整備し、近隣の病院などとの連携を通して、高齢者にとって住みやすい住環境を提供するプロジェクトだ。博多港開発による事業者公募の結果、西鉄が選定された。総事業費は約250億円。全体面積は約4.1haで、住宅部分が約3.1ha、バス営業所部分が約1haとなる。20年の完了を予定している。

 ネクストタウンに建設するマンションには、46階建て分譲マンション「センターマークスタワー」(283戸)を始め、12階建て賃貸マンション「ラクレイス香椎照葉」(116戸)、12階建てシニアマンション「サンカルナ香椎照葉」(一般136室、介護専用24室)のほか、14建て分譲マンション「センターマークスレジデンス」(228戸)がある。ラクレイスとサンカルナには、テナントが入る。業態、テナント名は次の通り。

▼スーパーマーケット(レガネットマルシェ)
▼ドラッグストア(ドラッグイレブン)
▼飲食店(焼肉慶州)
▼スポーツクラブ(セントラルスポーツジムスタ24)
▼クリーニング(洗光舎)
▼保育所(コスモス保育園)

 アイランドシティ自動車営業所は、新宮と香椎浜の自動車営業所を統合するカタチで、島内に新設された。開業により、天神・博多駅方面、千早駅方面の系統を中心に約4割増便。ただ、現在はバスロータリーがないため、バスの発着はなく、当面は窓口機能のみだ。

 「のるーと」とは、バスとタクシーの中間に位置するモビリティサービスだ。利用者からスマホなどで配車を受け付け、島内などに設置されたミーティングポイント(乗降場)でピックアップし、目的地最寄りのミーティングポイントまで運ぶ。

 AI活用型オンデマンドバスとは、AIが配車や最適なルートを選択する仕組みで、自動運転制御ではなく、タクシー同様に運転手が運転する。ミーティングポイントはサービス開始当初は48カ所だったが、6月に3カ所増設され、今後も適宜増設される予定だ。乗客定員は8名。1名あたりの料金は島内200円。島内からイオンモール香椎浜までが300円、千早駅までが400円の設定。配車受付時間は午前6時~午後10時。

 4月25日の運用開始からまだ日が浅いが、関係者によれば、「高齢者などに利用が浸透しつつある」そうだ。実証運用期間は1年間だが、その後も運用を続ける方針だという。アイランドシティに限らず、福岡市のほかの地域や他都市、海外での導入も視野に入れている。自動運転については現在、国内にはさまざまな規制があるため、実用化のメドは立っていないが、将来的には実装の可能性がある。

求められるスピード感

 物流と生活を支える希望の島アイランドシティ。島の開発は、それ自体が福岡の経済を潤すものであることに加え、島に立地するさまざまなインフラによって生み出された新たな活力が、福岡市全体に波及することは十分考えられる。

 ただし、気になるのは、開発に時間がかかり過ぎている点だ。島内土地の分譲完了は27年終了予定となっているが、埋め立て開始から33年、まちびらきから22年もかかる計算になる。そもそも27年に分譲が終了するかどうかも定かではない。「これが身の丈に合ったスピードだ」と開き直られればそれまでだが、だとすれば、「もともと身の丈に合っていなかったのでは?」という疑問が湧く。いずれにせよ、島のまちづくりはもう後戻りできない。夢のあるまちづくりの成否は、住民、民間企業の今後の頑張りに委ねられている。

建設中の「健康ネクストタウン」右からセンターマークスタワー、ラクレイス香椎照葉、サンカルナ香椎照葉

(了)
【大石 恭正】

(前)

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