2024年04月25日( 木 )

中国経済新聞に学ぶ~高島屋 なぜ上海で失敗したのか

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 高島屋は6月25日、中国から撤退すると発表した。上海高島屋の店舗を8月25日に閉店する。

 高島屋は日本の老舗デパートの一つで、創業は1832年、これまで187年の歴史がある。この様な老舗デパートが初めて中国に出店し、それが終わりを告げるとは、誰が想像しただろうか?

 撤退の原因について、高島屋常務取締役の岡部恒明氏は記者会見で、「米中貿易摩擦の影響などで消費が減速しており、人々にお金を使わせない様に、運営継続は困難と判断した。海外ではバトナム・ハノイで教育施設を柱とする不動産開発事業に参画する。海外事業では成長の見込める東南アジアに経営資源を集中する」と語った。ただそれがすなわち高島屋の中国撤退に直結する要因とは思えない。

 日本人は誰もが知っている様に、中国は大きく、人口14億人、その中の中産階級は既に3億人に達しており、日本の総人口の2倍強になっている。中国人は金持ちになり、一年に日本を訪れる人は800万人にも達し、日本で一人平均約22万円を消費し、それは第二位の韓国人の10倍にもなっている。銀座の大通りにあるデパートは中国人で溢れ、デパートでの日本人一人当たり平均消費額は1万2,000円だが、中国人は一人当たり平均10万6,000円になるとの事である。

 「もし中国の大都市に高級デパートを開店したら、より便利になる中国の富裕層の人達が買いに来ないはずがない」と、多分、高島屋デパートの社長は、当時そう思ったのであろう。

 高島屋は100%出資の経営形態で、カニが大好きな上海に進出して来た日本の老舗デパートである。開店当初、私は取材で、高島屋の責任者にお会いし聞いたところ、上海の古北地域を選択し、そこに店を構える事を決めた最大の要因は、古北地域は上海の高級住宅区で、一定の富裕層家庭が集中している事、第二に、日本人が一番多く集中し住んで居て、更に日本国上海総領事館が古北に在るばかりでなく、同時に国際貿易センタービルの半分を日本企業が借り、更に日本人学校があるからだとの事だった。

 しかし、上海高島屋は開店8年にして、儲かりはしなかったどころか、7年連続の赤字が続いた。2018年の損失額は9億日本円にも達してしまい、閉店を余儀なくせざる得なくなった。

 上海高島屋はなぜ、閉店に追い込まれたのか?その主な原因は4つある。

 第一に設置場所の誤り。

 古北は確かに上海の金持ちの居住区ではあるが、金持ちの大分部分の多くは高級生活習慣に慣れていなかった。高島屋のある幹部がいうには「我々が想像しえなかった事は、デパートの付近にこんなに多くの裕福な家庭がありながら、なかなか店に来ず物を買ってくれない。地下一階のスーパーすら行って食料品も買わない、高いのが嫌い」、即ち、古北地域は金持ちの人が居る様な世界に見えても、金持ちは実際いざという時になると、非常に細かく慎重になるとの事である。従って、高島屋に買い物に来る一番多いお客は、その周辺に住む日本人なのである。

 しかし、上海に空気汚染問題が出現して以来、元々上海で生活していた日本人家庭が「崩壊」し始めた。奥さんは子供を連れて日本に帰る、残された亭主は孤軍奮闘。新規に派遣される日本人職員は家族を連れて来ない、殆ど、「単身赴任」である。その結果、古北の日本人学校の生徒数は半分までに減少した。更に単身の日本人男性は自炊をするようになり、高島屋に行く日本人も益々減る一方となる。

 第二はイーコマース(ネット販売)の出現。

 高島屋が必死に努力して来たこの数年は、丁度、中国のイーコマース業績が頂点に達する数年と重なった。本来中国人の殆どは今でもデパートに行ってブラブラ買い物する習慣はない、買い物好きな人でも、一方で商品を見て歩き、一方でスマホで「淘宝」(ネット販売サイト)でその価格を調べる。

 当然高島屋の商品は確かに「淘宝」より高い、特に日本からの輸入品価格は、日本での販売価格の50%以上高いのである。高島屋の管理部門で幹部をしている私の友人は、こうした状況は何時も見てきた。例えば、お客さんは商品を手にして見て試着しても、最後にはお尻を叩いて帰ってしまう。挙句の果て、デパートのドアを出る頃には、既に「淘宝」にネットで注文を出している。

 イーコマースの商品展示センターの体験店を高島屋は担ってはいるが、高島屋1店ではなく、唯一の店でもない。更に悪いことに、日本商品展示センターにもなっている。従って日本旅行に行く少なくない人は、旅行前に先ず高島屋を一回りし、商品を見て、価格を把握し、一つ一つ写真を撮り、挙句の果て東京の高島屋に駆付け購入し、日本から自分で背負い持って帰って来る。

 第三は中国の消費市場低迷との衝突。

 2012年上海高島屋が開店したばかりの時、日本政府の「尖閣島国有化」に遭遇した。高島屋は広告も出さなかったが、店が破壊を受けるのではないかと冷や冷やと心配しながら、あえて売り場面積4万m2の高級日本製品デパートは店を開いた。この事は上海の一部の人は鮮明に覚えている。

 第四、高島屋への最後の一撃は、高島屋が借りている上海の不動産家主が賃貸費を下げてくれる事を期待し、数回に渉り交渉したが遂に失敗に終わった。

 上記4つの原因が妥当かどうかは、皆さん方の判断に任せる。しかし、高島屋が上海を離れる事は、後戻りできない事実である。


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