2024年03月29日( 金 )

これから本格化する地銀の経営統合を検証する(2)

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 【表1】を見ていただきたい。第一地銀(64行)の貸出金残高順位表である。

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~この表から見えるもの~

 地銀64行の19年3月期の貸出金残高は、前期比+8兆8,344億円の209兆8,490億円(前期比4.4%増。以下、前期比は省略)。預金は前期比+6兆1,255億円の262兆5,576億円(2.3%増)となっている。収益を上げるために貸出金の増加に力を入れていることが読み取れる。

 預貸率を見ると、19年3月期の平均は78.1%(1.5%増)となっており、18年3月期の平均は76.6%。貸出金の増加を裏付ける数字となっている。

・預貸率が一番低い銀行は山梨中央銀行(山梨県)で58.5%。60%台は低い順に岩手銀行(岩手県)が60.8%。以下、七十七銀行(宮城県)・秋田銀行(秋田県)・四国銀行(高知県)・北都銀行(秋田県)・東邦銀行(福島県)・阿波銀行(徳島県)・南都銀行(奈良県)の8行。東北・甲信越・四国地区の貸出が厳しい状況にあることがわかる。

 貸出金残高1位は横浜銀行で、前期比+3,790億円の11兆1,331億円(前期比3.5%増)となっている。2位は千葉銀行で前期比+3,208億円の10兆1,368億円(3.3%増)。この2行が10兆円を超えている。

・3位は福岡銀行で、前期比+3,858億円の9兆8,978億円(4.1%増)。横浜・千葉銀行より増加額および年率も超えており、20年3月期は10兆円突破の銀行の仲間入りをすることになりそうだ。

・4位は静岡銀行で、前期比+2,694億円の8兆5,568億円(3.3%増)となっている。

・5位は西日本シティ銀行で、前期比+2,960億円の7兆1,322億円(4.3%増)。6位の常陽銀行が前期比+5,312億円の6兆5,947億円(8.8%増)と大きく増加させてはいるが、西日本シティがすぐに5位の座を譲ることはなさそうだ。

 大きく順位を上げたのはきらぼし銀行で、前期比+1兆8,360億円の3兆6,961億円(98.7%増)。18年3月期は東京都民銀の計数だったが、18年5月1日、八千代銀行を存続行として東京都民銀行・新銀行東京の3行が合併して加わったことによる。

 一方、大きく順位を下げたのはスルガ銀行。貸出金残高が前期比▲3,471億円の2兆8,988億円(▲10.7%)と大きく減少したことにより32位に後退。預金残高も前期比▲9,240億円の3兆1,656億円(▲22.6%)と急減。シェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる不正融資が表面化し、厳しい経営状況に陥っている。近々、地銀の金融秩序維持の名目で、金融当局の指導による経営統合の動きが出てくることになりそうだ。

 九州地銀を見ると、肥後銀行が25位で前期比+2,420億円の3兆4,884億円(前期比7.5%増)。27位は同じ九州FG傘下の鹿児島銀行で、前期比1,677億円の3兆4,075億円(5.2%増)となっており、同規模の銀行と比較すると善戦しているのがわかる。

・37位は宮崎銀行で前期比+659億円の2兆5億円(3.4%増)。

・39位は十八銀行で、前期比+2,148億円の1兆8,851億円(12.9%増)と大幅に増加しているのがわかる。一方預金は、前期比▲104億円の2兆5,509億円(▲0.4%)と減少しているが、19年4月1日のふくおかFGとの経営統合や20年10月1日に親和銀行と合併することを見据えて、グループ内の発言力を強化する目的で増加させたものと推測される。

・40位は前期比+478億円の大分銀行で1兆8,461億(2.7%増)。44位は佐賀銀行で、前期比+2,156億円の1兆7,308億円(14.2%増)と大きく増加させ、46位となった親和銀行の1兆7,200億円(前期比+1,693億円) を抜き、順位を逆転している。

・56位は北九州銀行で、前期比+269億円で1兆1,591億円(2.4%増)と小幅な増加となっており、増加の勢いに陰りが出ているようだ。

・63位は筑邦銀行で、前期比+111億円の4,922億円(2.3%増)。地銀64行のブービーの位置にあり、厳しい経営環境は続いている。

<まとめ>

 上位行は収益を求めて貸出金を大幅に増加させているが、下位行の貸出金は前期比マイナスを含め、伸び悩んでいるのがわかる。日銀のマイナス金利政策によって厳しい経営環境は続いており、下位行を中心に経営統合を進めないと生き残れない状況になっている。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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