社員との出会いも大事だが、別れ方はもっと大事
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正式に従業員と退職(解雇)の手続きを交わさなかったことが原因で、あとになって企業側が大きな痛手を被るケースがある。退職に至るきっかけが、たとえ従業員にあったとしても、経営者は最後まで雇用契約を意識した対応が必要になる。
そんな事例が福岡地裁の訴訟でも見受けられた。元従業員が10年勤務していた福岡県内の社会福祉法人を相手に、損害賠償を請求した裁判がある。裁判資料によると、2年前、当該従業員は法人内で同僚と口論となった際に、「辞めてやる」と一方的に言い放ち帰宅。法人代表も帰宅を認めていた。もともと遅刻の多さや粗暴な言動が目に余る、いわば「問題社員」だったため、法人側にとってみれば、やっと「辞めてくれた」と安心していたのだろう。
その後、出勤の意思が原告になかったため、法人は退職の手続きを進めたが、相手が文書を提出せず、正式に雇用契約の解消をしていなかった。法人側は合意による解約と認識していたが、原告は解雇に合意していないと訴えに出た。5月末、第一審判決が下された。地裁は雇用契約がいまだに存在することを認め、支払われていない固定給や賞与、慰謝料を含め数百万円の支払いを法人側に命じた。顔を合わせたくない相手でも、正式に文書を交わしておけば、このような結果にはならなかったはずだ。なお、法人は判決を不服とし、控訴している。
【東城 洋平】
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