2024年03月29日( 金 )

【ネクスト(次世代)カンパニー】水産業でのプラットフォームビジネスに一生を賭ける(中)

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(株)ベンナーズ 代表取締役 井口 剛志 氏

FGNのスタッフらと打ち合わせする井口代表

「コイツならやってくれるんじゃないか」

 福岡市での起業に際し、旧大名小学校跡地に開設された官民共同型のスタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next(以下、FGN)」にオフィスを構えた。入居を申し込んだ理由は、「スポンサー企業との協業や行政とのタイアップ、入居している他企業の方々や、その他FGNが主催するイベントの参加者などと縦横のつながりが期待できたから」。運営には福岡市が関わっているほか、スポンサー企業には、九州電力(株)や西日本鉄道(株)、九州旅客鉄道(株)(JR九州)など地元を代表する企業も名を連ねる。かなり力の入った支援施設だけに、入居を申し込むベンチャー企業は多く、審査もある。

 井口代表には自信はあったが、根拠はなかった。曰く“心臓バクバク状態”でのプレゼンテーションをこう振り返る。「最終審査は5分間のピッチと質疑応答30分程で構成されていた。プレゼンは5分で終わった。評価については意見が割れたそうだ。反対意見としては、『水産業界自体が衰退産業だし、プラットフォーム型のビジネスモデルも別に真新しいものではない』というものだったそうだ。応援意見には、『熱意に感銘を受けた』『目に力強さを感じた』などがあった。最終的には『コイツならやってくれるんじゃないか』ということで、審査をパスした。応援してくださった方々には感謝しかない」。

水産業の課題は非効率な流通構造

 ベンナーズのビジネスは、自ら在庫をもたず、全国の漁業関係者、漁業協同組合、出荷仲買、バイヤーをマッチングさせ、自由に取り引きできる場を提供することを目的としている。役員には祖父の知り合いで、水産業の大ベテランの面々に加わってもらい、手助けしてもらっている。

 井口代表は、日本の水産業には主に3つの課題があると指摘する。1つ目が、環境変動や乱獲、漁業従事者不足などによる「水産資源の枯渇」。2つ目が多くの中間流通業者が介在する「非効率な流通構造」。3つ目が「日本人の魚食離れ」だ。どれも根が深い課題だが、とくにそのなかで最初に解決すべき課題が「流通構造の改革」としている。「中間流通業者の存在は、最終的な販売価格の高騰、漁業者の所得低下につながる。漁業をしても稼げない、稼げないから人が集まらない、魚の供給量が減るという、負のスパイラルが起こっている」と分析する。

(つづく)
【大石 恭正】

<プロフィール>
井口 剛志(いのくち・つよし)

 1995年5月26日長崎生まれ福岡育ち。2011年4月大濠高校入学。12年3月同校中退。同年8月John Bapst Memorial High Schoolに編入留学。14年9月ボストン大学経営学部(Questrom School of Business)に進学。18年4月にベンナーズ創業。同年12月に大学を卒業。19年5月からFukuoka Growth Next(FGN)入居開始。趣味は釣りと温泉巡り。好きな言葉は、バスケット漫画『スラムダンク』の登場人物・安西先生の決まり文句「諦めたら、そこで試合終了ですよ」。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:井口 剛志
所在地:福岡市中央区大名2-6-11
設 立:2018年4月
資本金:1,700万円
売上高:(19/10見込)2,500万円

<記者プロフィール>
大石 恭正(おおいし・やすまさ)

立教大学法学部を卒業後、業界紙記者などを経て、フリーランス・ライターとして活動中。1974年高知県生まれ。
Email:duabmira54@gmail.com

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