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2019年08月19日 07:00

流通業界イマドキの「人材確保事情」 人手不足が小売企業の経営を揺るがす(後)

求人募集の効果に変化

 小売業の求人募集といえば、以前はレジ後ろや店頭掲示板を使った店内掲示などが主であった。店内掲示は緊急性を要さない場合や、継続的に新規採用を続けたい場合に向いている。ここからの応募者は、我が店に通ってくれている近隣住民であることが多く、また店の雰囲気を知ったうえで応募してくれているのだから、面接以降の話が早い。求人と初期教育の費用が削減できるのがメリットだ。

 縁故採用も同様にコストがかからないうえで縁のある人が働くということがメリットだ。紹介者がいることである種の保証人的役割をはたし、始めからお互いに信頼関係を担保できる安心の雇用方法であった。しかし近年、企業と労働者の関係が希薄になってきたことで、縁故採用は減少している。

 求人雑誌に掲載すると費用はかかるが反応が大きい。掲載2週間で5~10人採用に至るようなケースもある。その一方で時期を考えないと、応募すらまったくないこともあるが、それでも必要な場合はコストをかけ掲載枠を大きくするのが常套手段。費用対効果の面で効率は悪化していくが、背に腹はかえられず、求人に係る費用はますます高騰していく。

多様化する求人方法

 先の通り、求人募集は方法によって効果も変わってきたが、もちろん時代や環境の変化とともに新しい求人募集の方法や、それに代わる方法が出てきた。まずは従来の求人募集の延長上で、募集方法が多様化した。

 インターネットやスマホから求人を探すのは当たり前の時代となり、ウェブ求人の比率が年々上昇。LINEバイトも若年層から支持を受けたが、利用年齢層も拡がりつつある。LINEを含むウェブ求人では、これまでの求人とはスピード感がまったく異なる。入ってきた応募に対し、時間を決めて日課処理で返信していては、せっかくの応募を逃すこととなる。週2回などとまとめて週課処理などもってのほかだ。

 ウェブ求人では、似たような条件で絞り込んで比較、一度に複数の応募が数クリックで可能だ。ウェブ求人の特性を理解している企業は、応募が入った数分後には「応募御礼」や「面接時間の提案」のメッセージを送る。なかには「履歴書は後からでいいので、今から面接に来ませんか?」と即刻、連絡を取る企業まであるという。募集側企業にとっては熾烈な争奪戦なのだが、これを理解せずに翌日に返事をしていては、即刻「応募辞退」または「既読スルー(無視)」されることも多い。

 このほか求人方法に対する新たな取り組みとして、現場では減少してきた縁故採用のメリットをクローズアップした、「リファラル採用」のノウハウを提供する企業もあるという。

労働者派遣と業務請負

 労働者派遣も需要が高まっている。最低限必要な人員だけを確保し、繁忙期は派遣で対応するようなことある。

 当然、直接雇用よりも高単価になるが、一時的な需要は派遣で対応した方が効率的な場合も多く、そもそもで必要最低人数を確保できていない場合も多い。棚卸要員、盆正月要員、お中元・お歳暮要員など、一時的といいつつ、年間の大部分を派遣で賄っていることも多い。そのたびに新たに派遣されてくる人に新たに業務を教える手間などの負担もある。ある程度需要が予測される業務については、労働者派遣に代わり、その業務に特化した「業務請負」も出てきた。業務請負と労働者派遣の大きな違いは指揮命令権をどちらがもつか。

 小売側が労働者に指示をするのは労働者派遣。業務請負の場合は小売側が請負会社に業務を指定し、その業務遂行に対して契約をする。労働者を雇用するのも、現地で細かな指示をするのも請負会社だ。

 労働者に対する作業教育なども請負会社からとなるので、一見請負のほうが良いように思える。そこにはもちろん単価の違いがあるが、それ以上に大きいのは、小売側が労働者に直接細かな指示を出してはいけないこと。1つひとつ判断が異なるような業務は請負には向かない。1つの明確なマニュアルに沿って教育、判断ができる業務でないと請負契約は難しい。発注元である小売側にも整備が必要だが、受け側の請負会社にもその業務に精通したノウハウが必要となる。

 有名なのが(株)エイジス(本社:千葉市花見川区、齋藤昭生代表)で、商品点数が多い小売にとって非常に厄介な「実地棚卸」を請け負い成長。各種の業務請負や労働者派遣など幅広く手がける業界のパイオニアだ。5%、8%と消費増税の際には売り場の値札やPOPの差し替え業務でも脚光を浴びた。

 小売業界から注目を集めるのが、レジ業務を請け負う(株)チェッカーサポート(本社:東京都江東区、伏見啓史代表)だ。レジ機器の進化もあるが、同社は独自のノウハウで、レジ業務に関して労働者派遣と業務請負の両方のサービスを提供している。業務請負で契約した場合は、レジ操作の教育からレジ稼働シフト管理、レジ違算の負担まで行う。同社の取引先実績一覧にはスーパーマーケットや百貨店、ホームセンター、ドラッグストアなど、多岐にわたる業態に、そうそうたる企業名が連ねられている。

必要作業の削減と人材確保の両輪で進める

 人集めの方法も多様化してきている一方で、現場で必要とする人手を縮小しようとする動きも活発だ。レジ機器などが進化し、活用できる範囲や選択できる幅が増えている。

 各企業がセルフレジの導入を進めながらも、想定したほどの人員削減効果が得られず、一時期、導入が停滞したが、セミセルフレジの登場により、ここ数年、再び導入熱が上がっている。また昨年より急激にキャッシュレス決済が拡がりつつあるなかで、キャッシュレス決済に限定したセルフレジも登場している。

 キャッシュレスに限定することで、セルフレジで不安となる現金の防犯面と機器体積の改善を可能とした。現金の管理面だけを見ればキャッシュレス専用レジが無人であっても強盗に遭う恐れはない。またレジ機器の体積の半分以上は現金保管スペースとそのドロアーを出し入れするための装置。キャッシュレス決済専用であれば、商品コードやキャッシュレス決済のコードを読み取るスキャナーとモニターがあれば事足りる。

 「LINEポケオ」や「LINEデリマ」など、飲食のテイクアウトやデリバリーを注文して、支払いまで済ませられるようなアプリも次々と登場している。利用者側の利便性はもとより、店舗側にとっても効率的だ。小売飲食といった流通業の求人の人気は、金銭や客とのやり取りでのストレスや、創造性とは対極的な流れ作業、固定作業のイメージがつき、年々下がっているという。

 顧客と同じく従業員まで奪い合うオーバーストア時代に突入している。利益水準を維持しながらストアコンディションを維持するには、機器やITサービスを利用した作業効率化や必要人員の削減とともに、自社の魅力を高めて従業員を確保する努力を続けなければならない。

※クリックで拡大

(了)
【吉田 誠】

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