わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2019年08月17日 07:10

香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(前)

 東京、ニューヨーク、サンフランシスコが世界3大港湾都市圏とされている。中国は今、これらを凌駕する世界一の港湾エリアを建設している。香港、マカオ、そして深圳などを含む広東省9都市で形成される「大湾区(グレーターベイエリア)」構想だ。昨年秋には広州からの高速鉄道を香港まで延伸し、香港から広東省珠海市・マカオをつなぐ「港珠澳大橋」も完成した。今まさに野望への布石が打たれている地域である香港、マカオ、広東省深圳市の現状を視察した。

世界最長の海上橋から見えてくる土木技術の進歩

ライトアップされた港珠澳大橋

 香港からマカオまで「港珠澳大橋」を通行するシャトルバスを利用した。同大橋は海底トンネルを含め全長約55km。香港国際空港のバスターミナルから10~15分おきにマカオ、珠海市行きのシャトルバスが運行している。マカオまでの料金は65HKドル(約910円。1HKドル/14円換算)。所要時間は約40分で海上フェリーより約20分短い。

 実はバス利用に際しては“激しい揺れ”を懸念していた。シートベルト着用を厳しく求められたことに加え、2年前には大橋建設工事中にコンクリート強度偽装疑惑の報道があったのだ。また、2008年に開通した「杭州湾海上大橋」(全長約36km)では舗装道路にもかかわらず、それまで経験したことのない激しい揺れをともなう走行であったことも想起された。

 しかし、それらはまったくの杞憂だった。滑らかな路面と最新構造の重厚な地下トンネル、ライトアップされた塔などによって夜間の通行ではあったが、大量の資金と技術が投下されたことがわかる。中国の橋梁建設技術はこの10年間で変容している。

大陸の影響力浸透も強かなマカオの希少性

 香港に比べて情報量の少ないマカオでは住民の「逃亡犯条例」への考え方が見えてこない。香港の「デモの熱狂」が報道されていたにも関わらず、マカオ市街は落ち着いていた。まずマカオの人口は香港の約1割以下の約66万人と「激しい活動」に発展する規模にはない。マカオに永年在住し旅行業を営む渡邊彰氏は「マカオは面と向かって中国に反抗しない」とその気質の違いを指摘する。ポルトガルからの返還後は日常で聞こえてくるのはポルトガル語から広東語に変化し、やがてポルトガル語の新聞も消滅した。

 一方で自治は守っている。在留邦人によると近頃、マカオの教育委員会が小学校教育での広東語の義務化は不要という趣旨の発言をしたことに対し、「中国の影響が強まっている今の状況で断言するとは立派」と評価する。こうした例を引き合いに、中国本土と直接正面から対峙するのではなく「うまくやっている」(在留法人)というのがマカオ流だ。

 絶妙な立ち位置の基盤となっているのがマカオの財力だ。有名な観光地として世界遺産を抱えるが、その資金を支えるのはカジノ、ホテルなどをそろえる総合型リゾート(IR)だ。カジノ経営ライセンスを有する企業は6グループ。地元資本独占から門戸が開放され外資参入が許された。

ガードマンが見守るカジノ入り口

 その1つであるラスベガス・サンズが運営する「ザ・ベネチアン・マカオ」はイタリア・ベネチアをテーマに建設された。商業施設の店舗数は350におよび、施設内には3つの運河が再現されており、そこでゴンドラに乗ることができる。もちろんフロア1階のカジノは24時間で営業している。また、「ザ・ベネチアン・マカオ」は長距離バスの発着点となっており、到着日夜には建物内まで待合の列が続いていた。ほかの5つのIRも劇場やアトラクションで独自性を打ち出し、しのぎを削っている。

ザ・ベネチアン・マカオ前のバス停で国境方面バスを待つ人の列

 中国政府は今後もマカオのみでカジノ経営を許可する方針を明言し、特徴を保護する姿勢を示している。マカオの現状としては周辺の経済成長や、インドや東南アジアなど外国人も引き寄せて資金を落としているということが挙げられる。昨年のカジノの全売上高は3,028億パタカ=4兆円。実質法人税率39%とすると単純計算で1兆6,000億円の税収になる。17年の1人あたりのGDPは62万パタカ=約800万円(13円換算)で日本の2倍だ。全国民の医療費は無料である。67%は中国本土からの訪問客だが、裏を返せば訪問客の3割以上を海外から呼び寄せていることになる。

 日本のIR設置は今後本格化するが、フィリピン、カンボジアなどマカオ以外のアジア諸都市には続々とカジノが設置されている。日本のIRはアジア人の集客に向けて、最高のエンターテイメント提供などのノウハウをもつマカオを始め、立地に勝るASEAN勢との競争を勝ち抜かなければならない。

世界遺産「聖ポール天主堂跡」
ポルトガル風の街並み

(つづく)
【鹿島 譲二】

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